2008/09/30

アクラ(accras)を実作してみる

旅の時の味の記憶、それとインスタントでつくった時の感触をたよりに、この料理本のレシピでアクラ(accras)の実作にチャレンジしました。

たらは塩だらをゆでて使用。あとは、小麦粉、卵、玉ねぎ、にんにく(乾燥粉)、万能ねぎと純和風な材料ばっかりです。

本のレシピを参考に、実際は小麦粉と水、卵黄などを合わせた生地に、小さめにほぐしたたらと、粗みじんの玉ねぎを一緒にしてフードプロセッサー。そこにメレンゲを合わせてタネのできあがり。それを、コーヒースプーンで揚げ油に落とすと、ぷっくり膨れて、普通にアクラになっちゃった。

アクラのたね
ついでに、さっと茹でたえびを小さめに切って混ぜ込んでみると、これまた予想通りのプリプリテクスチャが楽しめました。

アクラプレート
できあがったアクラは、生野菜との盛り合わせプレート風に盛りつけてみました。ほんとうはここにアボカドがあるといいんですけれど、このへんのスーパーって、今すぐ食べられるコンディションのアボカドって見つけるの、かなり至難の業です。

アクラサンド
それから、残ったアクラはサンドイッチにも。現地仕様ではバゲットでしょうけれど、これには、味的にも見かけ的にも、ピタパンが可成り向いていると思います。

おまけ
にんじんのサラダは、白ワインビネガー中心のビネグレットで味付け。
エルブドプロバンスとこしょう、粒クミンをアクセントに加えた上、味の奥行きを出そうとマルチニークのきび砂糖も加えてみました。

2008/09/26

えいのコロンボ、子山羊のコロンボ

代表的なクレオール料理のコロンボ。レストランの手軽な定食(menu)に入っていることも多く、いろんなバリエーションのコロンボを食べる機会がありました。

そんな中、個人的にベストだったのはこれ!

えいのコロンボ
グアドループ島の羽の左側。サントロズ(sainte rose)いう町の海岸沿いのレストランのお昼定食だった「えいのコロンボ」です。突き出しのアクラ(この写真です)、アントレに「アボカドのビネグレット」(半分切りのアボカドの種の部分にビネグレットを入れただけ、でかい!)っていうメニューでした。

最初、「raie」って言われてもピンとこなかったのですが、波板のような特殊な骨、そしてえいひれでおなじみの軟骨の食感。まちがいなくえいなんですが、割としっかり目の食感はコロンボのスパイスといっしょになって心地いいし、魚肉自体の味と香りもしっかりしていて、鶏肉と比べても味わいの手応えでは引けを取りません。具材はほかに、じゃがいもににんじん、トマト、たまねぎなど。

さらにこの店。ナプキンが布製のちゃんとしたレストランだけあって(でも定食は12Eとお値打ち)、ソースの中には焦げたクミンらしきものも。いわゆるスタータースパイス的な手法も使っていそうです。

市場などでコロンボの粉を買い求める際、店のマダムに作り方を聞くと、必ず「肉で作るもんだ!」という言葉が返ってきます。しかし、いろんなレストランやスナック(軽食店・屋台)のメニューを眺めていると、例外として頻出する海産物がありました。それが貝(lambis)と鮫です。えいも軟骨魚類だから、この定番ライン上に乗ってくるんだとおもわれます。

でも軟骨魚類だけでなく、味わいや食感にちょっと癖のありそうな白身のお魚なんかも、具の合わせ方、スパイスやハーブの使い方次第で、いいコロンボになりそうな気が。たとえば、あんこうとか、磯の魚とか…

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もうひとつのコロンボは、かなり定番な山羊(cabri)。料理本によっては、唯一載っているコロンボが山羊って本もあるくらい。

山羊のコロンボ
これは、フォールドフランスの海岸沿いに出ていた屋台のスナックで。

そりゃあ、お魚のコロンボも美味しいけれど、やっぱりスパイスとお野菜たっぷりなお料理には、しっかりしたフレイバーとがっつりした味わいのお肉にとどめを刺すって感じでしょう。かなり煮込みも入っています。

お肉には骨も多く残っているのですが、スパイスと野菜の味が絡みついたお肉を、骨から外しながらいただくのは、肉喰いとして至福の時間であります。

Rhum::デパズ編

デパズ
個人的にデパズ(depaz)のヴューラムは、とても上品でメロウで優しい印象。雄大なペレ山の麓に、広々とした敷地に蒸留所とシャトーを構えるデパズは、そのイメージをまったく裏切らない、美しい蔵でした。

シャトー
1902年のペレ山噴火まではマルティニークの中心都市だった、カリブ海側北部の町、サンピエール(saint pierre)から山間に少し走った高台に敷地は広がります。重厚な雰囲気の入り口を入ると、左手にはシャトー・デパスが。まんまフランスの田舎のようなシャトーですが、眼下にはさとうきび畑とカリブ海の青い海が広がります!そして、オープンのメルセデスが広々とした芝生の敷地の中を通って、塀の中へと入っていきます。

広々とした敷地に広がる蒸留所の施設も、芝生や木々はしっかり手入れの整った環境の中にあります。売店兼事務所の建物で受付を済ますと、見学順路はまず水車のある方へと向かいます。

水の流れ
そこでは、川から引き込んで敷地を流れる水に着いての説明が。蒸留に使うだけでなく、水車を動かしたり、発電用のタービンを動かしたり、シャトーの噴水にも使われている水の循環が説明されています。

順路は次に、蒸留設備へ。なかなかの大きさで、大きな発酵槽もけっこうな数が並んでいるし、高さが10m近くありそうな大型の銅製カラムも3本鎮座しています。ここではディロンのラムも蒸留していて、左の2本がデパズ用だそう。

デパズのカラム
いつもの基本事項を説明パネルで確認すると、発酵時間はここも48時間で、できあがるワインのアルコール度数は5-6%。それを55%のアルコールを含むラムに蒸留するそうです。

蒸留したてのラムは「80%」という蔵もある中、かなり低め。この辺も、あのメロウな味わいと関係してくるのでしょうか?

デパズの酒蔵
続いてコースは酒蔵へ。ガラス張りの見学蔵でビューラムの熟成風景が覗けるほか、外にはブラン用のでっかいステンレスタンクもあります。

デパズの古い器具の展示
この当たりから、見学コースには鐘だったり、古いポンプだったりと昔の道具も並べられ、古いカラムなどの蒸留器具やマークを集めたミュゼのような建物に続きます。セントジェームスなどほかにもラム博物館はありますが、ここの展示もなかなかに見応えがあります。

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見学を終え、お買い物も済ませると、レストランまであるこの蔵。非常に気分のよいところで、プランテーションな雰囲気というか、コロニアルな雰囲気というものを強く感じさせてくれるのですが、後日、島の別の場所で既視感を感じました。


そこは、タルタヌ(tartane)という、大西洋岸中部の村の先にある、シャトー・デュブック(chateau dubuc)という17-18世紀ころのプランテーションの遺跡。別に、「結局は奴隷によってもたらされた繁栄だ!」などと、顔をしかめて語るつもりはありませんが、シャトー・デュブックをラムの蔵巡りのついでに足を伸ばして訪ねておくのは、砂糖やラムの歴史=奴隷の歴史であるということを、ミュゼとは違い、(現在のプランテーションとの対比で)体感的に島と奴隷の歴史を感じることができるという店で、とても貴重な経験だと感じました。

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ペレ山
なお、この蔵からさらに山間にクルマを走らせるとモルヌ・ルージュ(morne rouge)の町。ここの中心街の教会近くに展望台があるのですが、ここからのペレ山の眺めはまたひとしおです。

Rhum::ネイソン編

現地のバーとかで飲んでると、酔っぱらいのおやじとかが「これがうまい」とよく勧めてくれたのがネイソン(neisson)です。(ブランの場合)ガーンと直球が当たるような、素直だけど芯のある味がして、でも、後味は意外にすっきりしていて、個人的にも好きな味でした。

さて、そのネイソン。瓶の形が独特の四角いかたち。

ZEPOL KARE
ブランのラムを貯蔵している蔵の床には「ZEPOL KARE]と書かれており、蔵の75周年記念ボトルにも、7,5の数字とともにZとKの文字があります。

その意味は、クレオール語での角張った肩の意。ZEPOLはフランス語の肩(epaule)のなまりで、KAREが四角い形を意味するのだそうです。

蒸留所は、フォールドフランスから北のカリブ海側を30kmばかり北上したところにあるcarbetという町にあります。フォールドフランスから向かうと、山道を降りてきて、町の入り口の手前に、赤と緑の建物が見えてきます。

見学は、案内の紙を渡されて、さとうきび、ムーラン、蒸留、と順を追って見学していき、各所に比較的親切な説明パネルが設置されています。

さとうきび畑
最初の「さとうきび」ですが、蔵のすぐ横の斜面に畑が広がっています。谷間のような立地からか、蔵と畑との一体感を感じます。

ネイソンの蔵
蒸留所の建物は赤を基調に緑を配したいろどり。整備中だったムーランも赤。そこで絞られたさとうきびのジュースは、8つある発酵槽に送られるのですが、説明書きによると、発酵期間は2-3日にもなるとのことです。

ネイソンのカラム
カラムは、銅製のが一本デンっとあり、蒸留されるラムは73%。ムーランもそうですが、なんとなく親父っぽさのただよう蔵の風情は、飲み屋のカウンターでオヤジたちを唸らせていた味わいに通じるものがあるようで、好感度が高まります。

ネイソンの酒蔵
そして、蒸留施設のすぐ横には、瓶詰めを待つとみられるビューラムの大樽が。どこの蔵でもそうですが、この眺めと香り、そしてガラスの管にのぞく茶色いラムの色には心が躍らずにはいられません。

ガラスの樽の栓
でもこの蔵。樽をよくよくみてみると、余所とはちょこっと違った風情が。展示されている樽の栓がガラス製。ここは、オリジナルのグラスがかなりかっこよく(後日、各蔵のグラス特集のエントリを掲載予定)、こだわりのボトルなどとも相通じるスピリットが伝わってきます。

ブランの蔵
ブランの蔵はこんなかんじで。マルティニーク島を訪ね、ラムといえばアグリコールのブランが基本になりつつある体には、だんだんブランの施設にも魅力を感じられるようになってきています。

ネイソン蒸留所のミニチュア
販売コーナーには、古い資料などのほか、蒸留所やカラムのミニチュアも。ちなみに、島のトロワジレ(trois illes)にある砂糖博物館(maison de canne)では、コンピューターの端末で、この蔵でのラム蒸留の流れを紹介していました。

ネイソンのtatankaボトル
また、地元の絵画(だとおもう)「タタンカ」の描かれたボトルは各蔵で販売されていますが、個人的に、ここのが一番かっこいいと思っています。

2008/09/25

アクラ(accras)むすび

「とりあえず、ビール!」ってなりそうな、クレオール料理の定番前菜・アクラですけれど、この薩摩揚げチックなお味、日本人だったら、日本風の食べ方にすぐに直結する気持ちが思い浮かんでくるはずです。

ひとつは、「いも焼酎も、絶対合う」。

ただこれは、アグリコールラムのブランには、いも焼酎にも通じるような独特のフレイバーがあるから、食前酒のティ・ポンシュ(ti'punch)をチビリチビリ飲りながらつまんでおけば、無理に焼酎を飲まなくても済む話、だとは思う。

もう一つのの考えは、ごはん、それもおにぎりにしてしまおうというものです。名付けて「アクラむすび」。ジャークむすびに続く、カリブおむすび第二弾です!

アクラむすび
てなわけで帰国後、さっそく実践。とりあえず、スーパーで買ってきたインスタントアクラの素を使ってアクラをつくり、おにぎりにして、海苔巻いて、塩振って、と。

結果は、もう外観を見れば語るべくもないでしょ。まんま、エキゾな天むす。これで、えびのアクラを、えび身のプリプリ食感残して作った日には、完全に天むすそのまんまです。

カリブ海方面ではお米をよく食べるから、この地域のお料理がご飯に合うのは自明の理だし、アクラの場合はベースが海の幸だから、海苔との相性もばっちり。表面に、ガリッと海塩の味が効いていると(個人的にこんな塩の効き方が大好き)、揚げ物独特の香ばしさ+濃い味わいとの相乗効果もバッチリです。

アクラ調理時には、2、3個余らせて翌朝におむすびにしてみたり、ジャークむすびと取り合わせて(ほかに赤い豆炊き込んだご飯のおにぎりとかも、赤飯チックで楽しいかも)みたりすると、すてきなお弁当にも役立ちそうですね。

インスタントアクラの素
ちなみに、今回使用のインスタントアクラの素。横に並べたボールペンとの比較でも分かるように、内容量100gの小っちゃい袋。値段は4E以上もする。

でも、これに水を加えて練り練りし、揚げるだけでアクラができるし、パッケージにあるみたいに20個以上は作れちゃう。便利でいいわ。

とりあえずのアクラ(accras)

旅の間、クレオールレストランで、たぶん一番アントレに食べた回数が多そうなのが鱈のアクラ(accras de morue)。鱈(棒鱈?)と小麦粉の揚げ団子です。

アクラ
定番中の定番で、街角のスナック(軽食店または屋台)などではサンドイッチの具にもなってたし、ナプキンが布のレストランでは、突き出しみたいに、注文しなくても出てきました。

レストランによっては、アンティーユの盛り合わせ皿として、アクラとサラダ、それに豚の血のソーセージ・ブータンの一緒盛りが、メニューに並んでいます。

アンティーユ一緒盛り
味もみたまんま。小麦粉が入ってすこしむっちりしたテクスチャがするけど、まんまスパイシーな揚げ団子。ほかには、えびを使ったり、料理本には子羊の脳みそを使ったものもでてる。

これを応用すると、いちばんお手軽なのは、伊達巻きを作るときみたいに、はんぺんをすり潰して、粉と卵とスパイスまぜれば、極めてお手軽に出来そうだし、脳みそがありってことは、とうぜん白子入りもありよね。

熱帯では、干し鱈を使うみたいだけれど、日本ではこれから鱈が手に入れやすい季節。いろんな味わいの幅がありそうですね。

とりあえず、

料理本に出ていたアクラのレシピ(概要)
(4人前)


材料
  • 干し鱈 400g
  • 小麦粉 200g
  • ベーキングパウダー 1/2コーヒースプーン
  • 水 150ml
  • たまねぎ 1個
  • にんにく 2かけ
  • 万能ネギ(ほんとうはシブレット) 2本
  • 卵 2個
  • 唐辛子 1/2個
  • 揚げ油

作り方
  1. 干し鱈を12時間水につける。それを20-25分ゆで、細かくする
  2. ボールに小麦粉、ベーキングパウダー、たまねぎとにんにくと万能ネギ(みじん切り)、卵の黄身を加えて、さらに泡立てた白身を混ぜてパテ状にし、そこに細かくした鱈、唐辛子を混ぜる
  3. 170度の油で揚げる
鱈は、別に干し鱈や棒鱈を使わなくても、甘塩の鱈なんかを使えば代用できそうですね。年の瀬も押し詰まると、水煮した棒鱈が店先に並ぶこともあるし。ただ、戻す工程がないぶん、分量はこのレシピより多めになるかもしれませんね。

Rhum::JM編

jmの蒸留所
マルチニーク島の北部大西洋岸、数ある蒸留所の中でも、いちばん北にあるのがフォン・プレビル蒸留所。そこで、JMラムが蒸留、熟成されています。

ここもまた、雰囲気のある蔵で、大西洋岸の幹線国道から、山間の道に入って少し走ると、JMの看板が。さらに入っていくと、谷底ににひっそりとRhum JMの文字が書かれた蒸留所、そして水をたたえた池(バナナの栽培に使うのだとか)などが見えてきます。

いくつかの国内販売サイトの記述を読むと、ここは大手企業グループ傘下ではなく、家族経営の蔵ということですが、蔵に至るまでのムード、気分の高まりは、この蔵の姿勢が感じられてなかなかのものです。

その谷底の敷地を、やや奥に入ると、見学の入り口となる受付兼売店があり、そのすぐ横に蒸留施設があります。蒸留施設、酒蔵などもこじんまりとまとまっており、蒸留所の床の一部は、石畳。大規模な蔵にはない、ファボリットの時にも感じたような、蔵の人たちの息づかいが感じられる雰囲気がなんとも酒好き魂をくすぐります。

JMのカラム
入ってすぐ、右手に目につくのが、わりと小さめの蒸留器(カラム)二本。銅製で、75%まで蒸留するそうです。

JMのcuve
蒸留工程からすると、順番は逆になりましたが、カラムの対面には17個の発酵槽が並びます。施設全体の雰囲気は年期が入った感じなのですが、発酵槽は新しくピカピカです。ここでは、48時間の発酵。北の方の蔵では、2日の発酵というところが目立ちます。

JMのムーラン
その左手に隣接して、ムーランがあります。色は明るく、でもトロワリビエールのそれよりはもっと鮮烈で強い青。蔵は深い緑の中に潜んでいて、海や空からは離れているのですが、このブルーは意外と重厚な蔵の雰囲気にマッチしているから不思議です。

小さく切り刻まれたさとうきびは、ムーランで、それぞれ1.5tの重さの歯車によって、900kg/cm2の圧力をかけて絞るのだそう。

ちなみに、大規模だったモニーでは、歯車の1個の重さは3t。ここいらから、蔵の規模、雰囲気が想像していただけるのではないかと。

ここまで上記の説明は、蒸留所内の説明パネルを参考にしたもの。図と文章の2枚があって、文章の方はつたないフランス語しか話せない自分でも、なんとか内容が理解できるような、わかりやすく簡潔な記述で助かります。

JMの酒蔵
さて、敷地のもう少し奥まで歩を進めると、ビューラム用の酒蔵が2つ。内部には冷房が入って、温度管理されています。山間とはいえ、外気が30度以上はある中で、非常に涼しく快適です。

現場で作業中のおじさんに訪ねると、樽はバーボン樽が主だと。ただ、実際にビューラムの香りを試してみると、(クレマンなんかと比べると)割とすっきりと、心地よく熟成された印象。ひねた酒が好きな自分としては、今までなら「なんか普通でつまんないかも」ってなるのですが、この蔵を訪ねた後では、「健全な環境の中で、素直にスクスク育って、いい子ね」って印象に変わりました。

JMの樽
樽には皆、共通の数字が記載されていて、上の電話番号みたいな数字は蒸留年、月、その年の通し番号を表し、下の三桁の数字は樽詰め時の内容量とのこと。「05 11 22/202」は2005年11月の蒸留で、22番目の樽、202lということです。

例によって、蔵の中にはねっとりした甘い香りが充満しており、薄暗い中から96なんて、じっくりと年を重ねている樽を見つけたりすると、心がときめいてきます。

2008/09/17

Rhum::ロングトー編*ラム蒸留の現場を見学!

緊急掲載・グアドループラム紀行の第二弾☆

ki jamsa ka marche
グアドループで二番目に見学したのは、ロングトー(longueteau)という蔵。(地図を北にして)蝶蝶の羽の左(basse-terre)の内側を、南下してサン・マリー(sante marie)というところにあります。主要国道を南に向かって走り、見落としてしまいそうな看板を右折(西に)入ると、カルクラ?(KARUKERA)という酒蔵兼売店があり、そこから未舗装の、トラクターが行き来するようなさとうきび畑の中の道を入ると、蔵があります。

さて、そのさとうきび畑の中を抜けていくと!!!!!!

なんと、白い煙、そして蒸気も上がっています。さらに、蔵の前には山積みのさとうきび。蒸留設備が絶賛稼働中だったのです。

敷地内に立ち入ると、蒸留とは別の仕事をしていたおじさんが案内してくれ、蒸留器など機械のすぐ横まで入れてくれて施設を案内してくれました。

そこで、今回は実際の蒸留課程をみながら、ラムがしたたりおちるまでをたどってみたいと思います。冒頭のクレオール語の看板じゃないけど、「こんなかんじで、施設は稼働してますよ(ki jansa ka mache=comme ca,ca marche)」

さて、トロワリビエールのところで詳しく書いたように、まずはさとうきびをしぼってジュースを取ります。

適度な長さにカットされた山積みのさとうきびを、

山積みのさとうきび
重機で機械のところにうんせって置くと、ジュースを絞るムーランという機械に入って、

さとうきびをムーランに
ジュースがしたたり落ちてきます。よりたくさんの糖分を絞り出すために、ムーランの上からは水も加えられています。

ジュースがしたたる
そうしてムーランを通過した絞りかす(バガス)は、

絞り終えたバガス
蒸留所の上の方に運ばれて、乾燥したバガスを熱源にした火の熱で乾燥される課程へと進みます。

乾燥の課程へ
そのバガスを燃やした熱は、蒸気を発生するのにも用いられます(画面中央奥のタンクのような機械で)。

蒸気発生器
蒸気の使い道は二つ。そのうち一つは、ムーランを動かす動力になっていて、この蒸気機関のモーターが、蒸気と「シューシュー」という音を吹き出しながら、ムーランの動力源となる大きな歯車を動かしています。

蒸気機関のモーター
絞られたジュースは、発送槽に送られ、この蔵では2日間の発酵を経て、アルコールを含んださとうきびのワインとなります。発酵槽に注がれている絞りたてのジュースは、加水していることもあり、わりとさらっとした柔らかな甘さですが、表面に泡が浮き、発酵が進んでくると芳醇な香りを漂わせるようになります。

発酵が進むジュース
発酵が終わると、いよいよ蒸留。もう一つの蒸気の使い道が、蒸留器(カラム)で、ワインからアルコールを蒸発させ、蒸留していく役割です。

カラムと周辺の機械
高さが10m弱(もっと低いかも)のカラムの下で蒸気とともに熱せられた(温められている)ジュースからは、アルコールが揮発し、上に上るにつれてその濃度を高め、そのアルコールのは冷却されて、液体のラムになります。

上の写真中央のカラムの左側にあるのが、冷却の機械。その横に出ているパイプからは、さわっても冷めている煙が噴出しているのですが、これがそのままアルコール。まともににおいを嗅ぐと、一発で鼻の奥までガツンと来ます。これだけで酔っぱらいそうですが、ラ・モニーの時以上に、ワインの時の華やかな香りを含んでいます。

アルコールの気体が吹き出す
そして、冷却装置を通った無色透明のラムが、したたり落ちています。手にとって、ちょこっとだけなめてみると、これまた激しく強い味。度数はなんと80%ということです。

蒸留したてのラム
蒸留所での仕事はここまで。

酒蔵はここにはなくて、来るときにみた建物と、もう1カ所別の場所にあるそうです。

ところで、その蒸留所近くの建物。看板には蒸留所名とは違うカルクラ(KARUKERA)という名前あります。聞けば、こちらの銘柄は輸出用で、ロングトーは国内用の銘柄だそう。

カルクラとロングトー
同じ蒸留所のラムとのことですが、並のグレイドのビューラムの香りは、5年のロングトーはシロップのようにとても甘く目の前の畑を感じさせる香りなのに、6年もののカルクラは全然渋いおやじのような雰囲気なのがおもしろいところ。

ちなみにその施設内には、カルクラ名の樽がずらりと並び、ガラス窓からのぞくことができます。使っているのは、すべてコニャックの樽だそう。

カルクラの酒蔵
なるほどミレジム(ヴィンテージみたいなもの)のボトルの香りを試してみても、強さより華やかさが強く立ち、たっぷりゆったりとしたご飯をたべた後とかに、気分がよさそうです。

Rhum::ダモワゾーの壁とグッズ

まだ、マルチニークで見学記を書いていない蔵もおおいのですが、次に訪れたグアドループ島で、先に書くべきことが二つあったので、そっちを優先して書くことにします・

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ひとつめ。

ダモアゾーのマーク
グアドループ島の(地図の上を北にして)蝶々の羽の右側(grande-terre)、ル・ムール(le moule)という町にダモワゾー(damoiseau)という蒸留所があります。この島の蔵の中では、割と名前が通っている方だとおもうし、実際蒸留所もわりと大きく、ラム自体も香りと味に、原材料のさとうきびの味とフレイバーが鮮烈に残っているような印象で、よいお酒だと思うのですが・・・

それは、日本でボトルを開けても分かる話。

蔵にいったら、それはもう楽しいできごとが待っていたのです。

まずは、樽に入ったラムを熟成させる酒蔵の壁!
そこには、それはそれは、いろんな楽しい絵が描かれています。

中でも、一番に目を引くのはこれでしょう。

私のラム全景
「私のラムを飲む」として、いろんなシチュエーションの絵が描かれているのですが、その絵柄も、状況の設定もなかなかにエスプリがきいています。

部分を拡大すると、こんなのや、

私のラム部分1
こんなのが。

私のラム部分2
さらに、この絵はバスタオルやTシャツとしてグッズにもなっています。

ほかには、島に流れ着いたラムの瓶や、

ラムの瓶
だまし絵チックな木製の窓、

窓の絵
ラムを製造の風景など、いろいろと。

ラム製造
少し黒くなっているのは、どの蒸留所(ラムに限らずコニャックやアルマニャックでも)の酒蔵にも着くカビみたいなもの。フランス語では「シャンピニョン」で通ってしまうのですが。

ところで、冒頭に写真をおいた、樽を運ぶ人を描いたこの蔵のマークも、かなりかわいくありませんか?これも、Tシャツなどいくつかのグッズになっています。

そのなかで、個人的に一番はこのボトル。

ダモワゾーの特別ボトル
瓶に描かれたマークのうち、樽の部分が透明になっていて、そこをのぞき見ると、中のラム(ブラン)がレンズの役割を果たし、瓶の反対側に描かれた船の絵が大きく浮かび上がる仕掛けになっています。

今回、いろんな蔵を訪ね、いろんなボトルをみてきましたが、これは断トツにおもしろい。で、味も不思議な甘さを感じさせる優しい味で、魅力はさらに高まります。

もうひとつ、なかなかの出来だったのがこのかご(パニエ)。

ダモワゾーのかご
観光地や土産物店で、藁のような繊維を編み込んだ帽子や細工ものをよくみたので、たぶんこのかごは地元の名産品?それに、皮のようなもの(素材は未確認)で、例のマークがついています。

観光客向けに、ガイドや案内の表示がしっかり整っている蔵はいくつかありますが、売店での楽しさは、ぶっちぎりにここです。