2017/03/27

地元関係の料理本~2016年の料理本その3

2016年の料理本シリーズ。その3は、ばたばたして上げていなかった、地元関係の料理本2冊です。しかも偶然、著者はお二人とも90歳代。


山田トシさんの手料理帳-河和田と暮らす二十四節季

去年は料理本関係のクラウドファンディングに2件乗っかりました。ひとつはすでに紹介済み、サラーム海上氏の「MAYHANE TABLE」。そしてもう一件が、地元福井県鯖江市河田地区の92歳のお料理の先生、山田トシさんという方のレシピを、地元の風土とともに紹介した本です。


この本が製作される背景や山田さんのことなどについては、クラウドファンディングのサイトに極めて詳しく記されていますので、詳細はそちらに譲ります。お料理はガチガチの伝統料理というわけでもなく、生活の中でほどよくアレンジされていて、作ってみたいというより、(料理ヲタク的には)このレシピができあがるまでの風土や生活背景などに思いを寄せるのが楽しい一冊です。山田さんの福井弁なコメントは、そうした想像力をさらにかきたててくれます。

越廼・伝統の魚介さばき

山田さんの料理本は、1000枚を越えるという膨大なレシピの中からのより抜き編だったのに対し、こちらの本は福井市の海岸部、越廼地区での緻密なフィールドワークの成果をぎっしり詰め込んだ濃厚きわまる一冊です。


著者(というか編者)の青木捨夫さんという方は地元で教員をされていた方で、前書きによると、この本のオリジナルは1976(昭和51)年に中学校の卒業生にガリ版で印刷したものをプレゼントしたものだそうです。それを昨年に再編集して出版されました。内容は魚や魚介類、海草などについて、種類別に地元で伝わる昔ながらの調理法を紹介しています。

そしてその内容は、お魚などの材料は市場に流通して、お店で入手するのがあたりまえな今の時代にあって「海、野山、田畑で入手」したものを前提としたもので、お魚をただの食材としてとらえるのではなく、「季節感や郷土性」「原材料から調理、食品化」「季節や地勢、自然などへの感動や詩情」までも伝えようとしていて、ホントに読んでいて感動的かつ、まったく 飽きません。

食べ方やレシピも、様々な情報が手に入るようになって画一化されがちな昨今には忘れられがちな地元ならではな内容がたっぷり。最初からページを繰っていくと、シイラを漁場でさばいてつくった「沖なます」や、ブリ飯、骨づくりというお刺身の作り方などと、とても興味をそそられます。

文面には、たとえばエイをお刺身にする部分の(要約)
・ひれを切り落として皮をはぎ、筋に直角に包丁を入れて刺身にし
・なるべく薄く刻むと軟骨が数珠のように連なって刺身ができあがる
・歯ざわりと味が大変よい。食通にとっては、忘れられない郷愁的な味である

など、あちこちに、調査した人の丁寧なフィールドワークぶりもにじみ出ています。そしてお魚のイラストも、なんとも味があってかわいい。

この著者の青木さんという方、他にも地元越廼地区のありとあらゆる(誇張ではない)風俗・文化を調査され、それを冊子にまとめていらっしゃいます。どれも精緻で驚愕の内容の濃さ。越廼の図書館で閲覧できると思います。

牛腩([月南])大好き!

広東系のお肉料理では、何が好きって牛バラ肉の煮込み=紅焼牛腩(二文字目はにくづきに南=[月南]、環境によって表示されない場合もあるので以下はこの二文字合わせの方法で表記します)が大好きです。地方の中華レストランではなかなか食べられないので、県外で広東レストランに入った時には、かなりの確率で注文します。だいたい最後のお食事に、焼きそばまたは汁そばで頼むのがお約束です。

そんな紅焼牛[月南]を、ここ数年、自宅で作るようになりました。その理由はやっぱりコストコ。お肉コーナーにあるビーフリブフィンガー(中落ちカルビ)を、じっくり煮込んで広東味にします。このお肉の用途はほぼ固定していて、牛[月南]8、ビール煮2といったところ。洋風にするには、ワイン煮よりビール煮の方がどうも好みです。


紅焼牛[月南] 4人分

材料
  • ビーフリブフィンガー 4本
  • 香味野菜 ネギ、しょうが
  • スパイス類 八角・五香粉等、黒胡椒(粒、軽くつぶす)、ローリエなど
  • 紹興酒、砂糖、しょうゆ、オイスターソース、甜麺醤
レシピ
  1. ビーフリブフィンガーを四等分に切り、さっと下ゆでする。
  2. 1を油をひいた鍋で炒め、軽く焦げ目を付ける。そこにたっぷりのお湯を入れ、スパイス、香味野菜を入れて煮込み始める。あくを取る。
  3. あくが落ち着いたら、紹興酒と砂糖を入れ、約1時間半煮込む。
  4. 醤油、オイスターソース、甜麺醤少々を加え、やや薄味の煮汁でさらに約1時間半煮込む。
  5. 肉がスジまで軟らかくなったら、煮汁の味を調え、とろみを付ける。
  6. やきそばやご飯、汁そばの上に、ゆでた青菜と一緒に盛りつける。


スパイスは油鶏の時と同様、煮込み用の中華スパイスミックスを使用しています。八角が強いのが苦手な方がいらっしゃるときは、軽く五香粉を振ってほのかな中華フレイバー程度に抑えてもよいかもしれません。

料理本やレシピサイトなどをみると、中華らしく中華鍋で調理している画が多いのですが、自分の場合はじっくり煮込む調理のため、シチューのように鍋を用います。やきそばなどのあんかけを楽しむため、中華鍋な画像よりも煮汁も相当たっぷりにしています。

煮上がったものを冷凍することもありますが、その場合はとろみを付ける前の段階でとどめておきます。