2008/10/22

Rhum::シモン(simon)編

シモンの蒸留所マルティニークを訪れるまで、わりとよく飲んだ銘柄といえばクレマン(clement)とJバリー(J.Bally)。その原酒を蒸留しているのが、シモン(simon)蒸留所です。

大西洋岸、アビタシオン・クレマン近くのフランソワ(francois)という町から、ヴォークラン(vauclin)という町に向かって海沿いに南下した場所です。

ちなみにこのヴォークランは、海沿いに漁師さんの小屋が建ち並んでいて漁港情緒が強く感じられる上、高台の教会もなかなかに格好がよいです。

蒸留所を訪れたのは、土曜の午後。閉鎖中ですが、蒸留施設のだいたいの様子はみせてもらうことができました。

シモンのカラムを覗く
とはいえ、カラムのある部分は閉鎖され、隙間から覗くていど。

シモンのムーラン1
蒸留施設の外壁やムーランなど、この蔵の色は明るめの緑。日本でも比較的メジャーな二つの銘柄のラムを担っているだけあって、かなり大きい施設です。

シモンのムーラン2
シモンのタンク
(たぶん)ラムのタンクも

シモンの蒸気発生器
蒸気を発生する装置も。

ずらりとタンクローリー
それよりも印象的だったのが、でっかいタンクローリーやトラックが並んでいたこと。なるほど、これでできあがったラムを運搬するんですね、たぶん。。

蒸留施設の裏側にまわると、酒蔵がありました。

シモンの酒蔵
あれ?たしか、日本語のラムに関するサイトでは自社銘柄は発売していないってあった筈なのに。でも、樽にはいったラムが熟成されていました。近くのバナナ選果場(多くの施設では、さとうきび=ラムだけでなく、バナナも栽培していたりするらしい)で、洗車していたおにいちゃんに聞くと、シモンも自社で「アイヨット」っていう銘柄を発売しているそうなんです。

2008/10/12

Rhum::アルディ(hardy)跡

蒸留所跡にいたとかげ大西洋側中部のトリニテ(trinite)という町から、東に突き出た半島にタルタヌ(tartane)という村があります。デパズの時にでてきたシャトー・デュブックの遺跡がある半島です。ヴァカンスでやってきた人が滞在するような「ツーリストの村」です。

そこに、マルティニークの観光マップでは蒸留所の印が打ってあります。それがアルディです。海岸沿いの道を走ると看板も出ていますが、かなり昔から蒸留はしていないそうです。

蒸留所の遺構
通りに面した建物はお土産屋さん、蒸留施設跡の奥にある建物からは、なにやら香ばしい匂いがすると思ったら、今はパン屋さんになってました。

アルディ名のラムは製造され、村の入口のガソリンスタンド兼よろず屋では、同社のラムも販売していましたが、パン屋のおじさんによれば、蒸留も熟成・瓶詰めも別の土地でしていて、今はここではなんにもしていないそう。

今はパン屋さん
でも、せっかくなので遺構を見学してみました。

錆びた発酵槽
発酵槽は完全に錆さび。

残されたムーラン
でも、かなり昔に蒸留を止めたといっていたわりには、わりにきれいなムーラン。

2008/10/10

Rhum::セントジェームスのミュゼ

セントジェームスの広告
僕が初めて飲んだマルティニークのラムは、セントジェームス(saint james)のビューラムでした。京都の酒屋さんで購入しました。なんか変わった味やなあ、と思いましたが、これがイカした味なんだと思い込んで飲み続け、結果、蔵めぐりをするほどのお気に入りになりました。

その出会いは、まだ未成年のころ読んだヘミングウェイ「移動祝祭日」という本の、最初の文章でのワンシーン。パリのカフェで、書き物をしながらグラスを重ねている情景に出くわし、パリとラムっていう組み合わせに、不思議なトキメキを覚えたものです。

そんなセントジェームスは、なかなかの老舗大手だけあって博物館を構えており、ロンプラ(英語版・カリブ海の島々)の地図にも載っています。

が、蒸留設備の見学はできませんでした。

古い道具
そのミュゼは二階建てで、ラム製造の歴史と仕組みを、昔使われていた設備や道具などで紹介しています。
古いカラム
銅製のカラムの部品などおなじみの展示物に加え、動物を使ってさとうきびを絞るムーランや、

動物で動かすムーラン
古い瓶詰めに使用するとみられる機械などは、なかなか興味深くみることができました。

瓶詰めの機械?
ただ、肝心の蒸留施設が見学できず欲求不満な中、いちばん満足度が高かったのが往年の時代のボトルも多く並んでいること。世界で最初にスクエアボトルを採用したとも聞くこの蔵ですが、かなり古そうな(ひょっとしてペレ山の噴火を経たもの?)ボトルも同じ形をしているのを見ると、ヘミングウェイの時代も思い起こされるようで感慨もひとしおです。

古いボトル
さて、結局見学できなかった蒸留設備はかなりでかめ。

遠目にみる蒸留所
ハイシーズンには、昔さとうきびを運ぶのに使った線路をつかったプランテーション列車(トロッコ列車みたいなかんじで)のようなものも走らせているようです。

2008/10/05

茹でたてのブーダン(boudin)

アクラ(accras)と並び、クレオール(アンティーユ)料理の名物に数えられる血のソーセージ・ブーダン(boudin)。アンティーユの前菜盛りでは、アクラの下にブーダンが埋もれています。

前菜盛りのブーダン
ブーダン(・ノワール)といえば、フランスのお料理の中でも定番で(むかし在日フランス人学校の学校祭に出かけた時、学食で食べたくらい!)、個人的にも特にお気に入りの一品。りんごの焼いたのを一緒に添えて、パンとワインと一緒にいただけば、そのたっぷり濃厚なお味に、一本で満足してしまいます。

でも、アンティーユ風のブーダンは、そんな従前からの印象を覆してしまうような軽い味わい。血のソーセージといえば、韓国のお米の入ったやつも好きなんですが、それよりも軽いかんじ。

当地では、メニューの中でもアントレのコーナーにのっているし、大きさも親指くらいの長さ。食べたかんじも、脂の味や香辛料の風味もそんなに強くなく、すっきりと舌の上を通りすぎていきます。盛り合わせなどで、サラダが添えられていると猶更に。

そんなブーダン。

マルティニーク南部のリビエール・ピロット(riviere pilote)という町のマルシェに立ち寄った際、何人か、ブーダンをその場で作って、ゆでで、売っている人を発見。

豚腸に血を詰める
でっかい鍋に入ったブーダンの中身を、その場で豚腸に詰め、茹でています。テーブルの上には、でっかいボールに茹でたての温かいブーダンもてんこ盛り。

茹でたてのブーダン
その中の一人のおばさんに「写真をとっていい?」と聞くと、快諾してくれ、しかもナイフを手渡してくれて、ほかほかのブーダンも試食させてくれました。

これが朝の9時ごろのことなんですが、さすがに茹でたて。ラムでもそうだし、ほかのお料理でもそうだけど、できたてのものに共通する独特の軽やかさが感じられ、焼いていないからレストランなどでいただくよりも、さらにすっきりした味わい。

パリのお総菜やさんとかでも、ブーダン・ノワール売ってそうだけど(ていうか、昔旅行の時買ったことあったかも)、こんなに爽やか気分でブーダン食べる経験って、なかなかできないですよね。

2008/10/04

Rhum::アビタシオン・サンテティエンヌ編

あえてこの蔵のエントリ・タイトルにはアビタシオン(habitation)とつけました。なぜかというと、商品についている新しいロゴがHSE(habitation sant-etienne)の頭文字を取ってデザインされているから。

サンテティエンヌの箱1
ほかには、クレマンなども施設名にアビタシオンとついています。PCにデータを入れているクラウン仏和辞典を引くと「住居、居住」などという意味が出ていますが、意味合いとしては「(プランテーションの)農園」が近いのではないかと。

さて、この蔵。場所は、大西洋岸のトリニテ(la trinite)から、サンジョセフ(saint joseph)を目指し、グロ・モルヌ(gros morne)を過ぎてしばらく走ったあたり。田舎の町と町をつなぐ道沿いですが、そこはそこ、「アビタシオン」なので、敷地に入ると、いかにも「農園」といった雰囲気の空気が漂い始めます。

私的な建物?
ちいさな規模の蔵ですが、蒸留所関係者の私的な施設とおもわれる建物が花に包まれている様子とか、ちょうど見学中に見舞われた通り雨とか、その通り雨に曇るすこし離れたところの椰子の木とか。農園や蒸留所プラスαの部分にも、プランテーション感はみちみちています。

ここもクレマンなどと同様、蒸留はしていません。1984年に蒸留施設は閉鎖され、ほかの蒸留所から買っているとのこと。敷地内には、ラムを熟成する酒蔵やボトル詰めの施設、そしてかつて使われていた蒸留施設の跡形もみることができます。

サンテティエンヌの酒蔵
蒸留はしていない蔵の場合、足はまず酒蔵へと向かいます。酒蔵の建物は、白壁または石積みの壁に、赤茶けた色の扉と、煉瓦ともマッチする落ち着いた風合いです。

サンテティエンヌの酒蔵内部
貯蔵している蔵は閉まっていましたが、ボトリング前とみられる蔵が開いていました。見学コースのととのっている蔵にはない、ヅカヅカと踏み込む(でも、ちゃんと会社の人に、みていいですか?って聞いていますよ)この瞬間の心のウキウキ感。

ガラス管のラム
そこで、ラムの香りと揮発したアルコールで育ったシャンピニョン(黴)の黒、そしてガラスの管に覗くこの色。言うことはありません。

使用している樽は、たしかバーボン樽と言っていたような…。というのも、蔵をみていたところで、突然の雨。メモした文字が濡れてしまったのです。でも、買ってきたvsopの味わいは、たしかにそうかも、って思えるスジの通った味わいです。

旧蒸留施設の外観
今は使われていない蒸留施設も、外壁などは酒蔵と同じトーンの風情。

古いムーラン
屋根などはなくなっているけど、ムーランなども扉と同じ煉瓦色。内陸部にありながら、空の開けた立地と相まった農園の風情ともども、かつて蒸留されていたラムはどんな味わいだったのだろうかと想像を駆り立てられます。

ボトル詰め施設
訪問時、ボトリング施設は稼働中。ブランのラムが入っているのかとおもわれるタンクとあわせ、新しくきれいな施設なのですが、その片隅で目を引いてやまなかったのが、冒頭の写真の段ボール箱。そう、ここはHSEのロゴが印刷されたニューデザインの箱やボトルが、矢鱈にかっこいいのです。

vsopの箱
vsopを一本購入したのも、味もさることながら(基本的にバーボン樽系は好み)、この外箱やボトルに惹かれた部分も、かなり大きかったりして。