2014/01/30

冬こそレバノン風ポテトサラダ--salada batata

みんな大好きじゃがいものサラダ。自分の場合、基本はレモン汁とオリーブ油と塩でざっくり和えて、そこにお好みのハーブやスパイスなどのフレイバーを効かせて、いくらかの具(サーモンとか)を入れるってのが定石です。ハーブ/スパイスでは、ディルやスマックと並んで欠かせないのが葱です。

そう、葱とミントを使った、大定番のレバノン風ポテトサラダ。

万能ねぎを使ったり、長ねぎを使ったりと、使うねぎは時節に応じていろいろですが、先日つくったサラダはこれまででベストの出来映えでした。


その時のねぎは市場を通じて買ってきたものではなく、畑で育てたねぎをいただいて、軒下などにいけておいて、それを使う前に一皮、二皮剥いたようなもの。太くもなく細くもなく、色目も青と白とが折衷しているような、いかにも普通のもの。

それを、たっぷりと粗めのみじん切りにして、茹でたてのジャガイモと和えます。芋の熱と、オリーブ油とレモン汁、そしておいしい塩(今回は越前塩という地元産の海塩を使用)で、ねぎならではの甘みが程よく引き出されて、これは冬ならではの味わいです。はっきりいって、冬のねぎにはミントいらない。シンプルな味わいは、より万人にオススメです。

冬のサラタ バタータ

  • じゃがいも 中3個
  • 冬っぽいねぎ 2本
  • オリーブ油、レモン汁、塩 各適量
  1. 皮をむいて、大きめの一口大に切ったじゃがいもを茹でる
  2. ねぎを粗めのみじん切りにしてボールに取り、そこにゆであがったじゃがいもを加える
  3. 2にオリーブ油、レモン汁、塩をふりかけ、ざっくりと和える
このサラダ、元ネタはNHKの番組で、横浜・アルアインのシェフ氏が紹介していたもの。味つけは全体に均質ではない方が楽しいと思うので、3の課程はかなり適当に。味が足りなかったら、めいめいで調整してもらいましょう。

写真の調理時には、余っていた万能ねぎも加えています。春から秋には、ぜひフレッシュ/ドライのミントのメンソール感も加えてください。

ついでに、このサラダのアレンジレシピ(タラモ化)も上げときます。

2014/01/27

ある日のサンドイッチ----フェタチーズと胡瓜

相変わらず、地元スキー場の食堂にはシーズン早々飽きているので、おべんとう持参の機会は多くなりそうです。そんな訳で、最近のサンドイッチ。


(特に夏場の)生活必需品、フェタ。正確には牛乳のトルコの白チーズ、ベヤズペイニルと胡瓜を合わせたものです。オリーブ油をかけて、たっぷりのドライミントも振りかけて。トマトがあれば、もっと嬉しかったかも。

ヨーグルトのサンドイッチと構成は同じですが、白チーズの方が食感も塩辛さもしっかりしている上、パンもルヴァン系なバゲットやカンパーニュを使いたい気分なので、すっかり別のサンドイッチです。

フェタ+パンといえば、東地中海方面への旅行を思い起こして、朝食にも良さそうですね。その場合は、果物と魚肉ソーセージ(日本のは多分に豚成分入ってそうだけど)も添えてみたい。

ところで、白チーズはトルコ系の食材販売会社から昨夏に購入するようになり、(国内の状況を鑑みるに)そこそこ適価で、東地中海方面のお料理が好きな身としては、とても便利な生活が送れるようになりました。オリエント風なサラダの具にするのはもちろん、エキゾ飯+音楽の伝道師、サラーム海上氏が紹介していた西瓜+ミント+白チーズに、去年の夏は非常に大はまりしてしまいました。

ちなみに西瓜+チーズな組み合わせは、イタリアレストランでもリコッタチーズを合わせていたのを、メニューでみかけたことがあります。

2014/01/21

牛胃袋のトスカーナ風煮込み

料理本ネタの合間に、ちょいと実作やってみた系エントリも。

専門料理誌のネタを前々エントリで書きましたが、たいてい購入する特集にアバ、内臓料理特集があります。内臓料理は、心の大好物ベスト10を数え上げれば、上位入りはほぼ確実。特に腎臓、胃袋、大腸が好きです。

そんな内臓を使った伝統料理、しかもこのブログでは珍しいイタリア系の料理にチャレンジしてみました。かつてフィレンツェの中央市場有名店でパニーノをたべたことのある、トスカーナ風の煮込みです。レバノン料理好きにとっては、青臭いくらいのパセリソースがたまりません。


参考にしたのは、前エントリで取り上げた専門料理2012年1月号「伝統料理」特集に掲載の、トスカネリア・田中祐介氏のレシピ。なにげに眺めていたこの本で、緑がかったソースをみて秒殺。ちょうど手元にたっぷりの(生食には育ちすぎた)イタリアンパセリの束があったこともあり、焼肉食材店にランプレドット(牛の第4胃、焼肉名ギアラまたは赤センマイ)を買いに走ってしまいました。焼肉系の店で買う内臓肉は割高かもしれませんが、きちんと掃除してくれてある手間を考えれば、一般人の料理にはとても便利でした。

ついでに、輸入冷凍のトリッパ(牛の第2胃、トリップ、ハチノス)も入れました。

○牛胃袋のトスカーナ風煮込み

材料
  • ギアラ、ハチノス 各400g
  • 香味野菜:玉ねぎ、人参、セロリ、ブーケガルニ(セロリの葉、パセリの茎、にんにく、黒こしょう、月桂樹の葉などを袋に入れる)
  • ソース
  •  イタリアンパセリまたはパセリ スーパーに売ってる一般向けなら3-4パック程
  •  コルニッション(ピクルス) 3-4本 細かく刻む
  •  ケッパー 大さじ1-3 細かく刻む
  •  玉ねぎ小 1/2個 みじん切り
  •  セロリ 玉ねぎの1/2くらい みじん切り
  •  白ワインビネガー 1/2カップ
  •  塩、オリーブ油、ガーリックパウダー
レシピ
  1. 下ゆで(状態によっては数回茹でこぼす)、掃除したギアラとハチノスを大ぶりに切って、香味野菜と一緒に柔らかくなるまで(今回は4時間ほど)煮込む
  2. ソースを作る。パセリを細かくみじん切りにして、アクを軽く絞る。ボールにソース用の他の材料を混ぜ合わせ、味を調える
  3. 柔らかく煮上がった1を一口大に切り分け、鶏の出汁をベースに薄く味を付けたスープで軽く(今回は1時間弱)煮込む。
  4. 3に2のソースを加え、さっと火を通す

実作してみて感じた第一のポイントは、仕上げ前に、一口で食べやすい大きさに胃袋を切り分けることです。ちょっと食べ応えないかな、と思うくらいがベター。よくあるトマト煮のトリッパより小さめが吉です。そして食べる皿に取る時には余分な煮汁も切ります。

最初は大きめの肉のまま食べてみたのですが(写真の状態)、ナイフで切ったりかみ切ったりしにくく、ソースの味も乗らずに酸味ばかり勝って、ちっともおいしくありませんでした。それが、切り方を変えて、さらに盛り付け時に余分な煮汁を切ると、味わいが激変しました。とても重要。

フィレンツェの人気店では、煮込んだものに生のようなソースをかけていました。その食べ方も悪くはありませんでしたが、軽く煮た方が酸味などの角は取れそうです。お好みでどうぞ。

紹介されていたレシピには各食材の分量が出ていませんでしたので、ここに記載した分量は実作時のだいたいの加減です。これで、自分の感覚では「まあまあ酸っぱい」くらい。あと、本のレシピでは仕上げの煮込みは、香味野菜を新たに炒めた上に、ブロードで数時間煮込んでいます。そこは家庭料理ってことで省略しました。

2泊3日の冷やかし程度の滞在経験しかなくても、とりわけ気になるこのお料理。トスカーナ好きの方でもっとよいレシピ等ありましたら、いろいろ教えてください。

2014/01/20

料理本についての料理本について-最近読んだ料理本その2の2

前の専門料理なエントリに絡み、特に料理本を扱った本などについ雑記少々。

まず、この料理書特集


普通の料理本を扱った特集だと、どうしても間に編集者が介在した誌面を通しての紹介になりますが、この号では頭でバーンと見開きで、何人かの書棚の写真がでてきます。書棚=料理人の頭の中がそのまま提示されていると、ただオススメの本を紹介されるよりも、いろんなことが見えてきます。

小説や漫画などをみると世代感覚がにじみ出てくるし、洋モノの料理書の部分を眺めると、その料理人氏がリスペクトしている料理人や、特に好きなタイプの料理、修行経歴などもみえてきそうです。場合によっては、あー、この人ビジネス書(とか人生訓とか)をしっかり読むタイプなのね、ってこととかも。

実用面では、「影響を受けた本、薦めたい本115冊」が、とても便利。こっちの場合は、逆に編集の仕事が有り難い。古典や定番をきっちり押さえた、こういう目録みたいな記事は、手元に置いておくと、なにかと役立つものです。

もうひとつ、「料理書に強い 書店・古書店案内」もカラーでうれしく、個人的にはオススメの本の紹介よりも、店主が語る商品の動き方についてのコメントの部分に興味をそそられました。

参考までに編集ブログのこの号についての「編集後記より」 。



*****

関連で、手元にある料理本についての料理本(ていうか雑誌等)を紹介しておくと、


まず一般向けで、極めて汎用性が高いのが、このブログでも何度も参照している「料理通信」誌2007年4月号の「100回作ったパーフェクトレシピ」特集。レシピ本として、便利でツボがきっちり押さえられていて、間違いなくおいしい素晴らしい号でしたが、料理本視点でも秀逸でした。

ラベットラ落合氏壇流という、料理好きにとっては鉄板なレシピ本群を冒頭で取り上げ、その味の秘密とルーツを掘り下げる記事は、料理本好きには堪えられないものがあります。

また、「巴里の空の下~」やホルトハウス房子ものなど、暮らしの手帖社や文化出版局系の、ほぼ古典といっていいような本「伝説の料理書」をフォローしてあったり、料理番組の変遷についての記事があったりと、レシピ本以上の楽しみをもたらしてくれます。



*****

「専門料理」では、先日たまたまあるレシピを参照するのに手にした2012年1月号の「伝統料理」特集についていた「仏伊14人のシェフに聞く『伝統料理、私はこう学びました』」という記事は、語りのテキストのボリュームがそこそこにあって、今となっては料理書特集号の記事を補足してくれます。



*****

それから、本や雑誌ではないのですが、2000年版の紀伊國屋書店の「料理書フェア」目録。ひたすら出版社とタイトルが並んでいるだけですが、これも持ってるとなんとなく安心。とはいえ、如何せん古いので、新しいものあったらもらってこなきゃ。

最近の「専門料理」誌-最近読んだ料理本その2

料理本シリーズ、その2。

割とよく購入する料理雑誌に、料理界の岩波書店こと柴田書店から出ている「専門料理」誌があります。自分の料理は基本的に足し算(最低限の手間を積み上げていく)ではなく、引き算(玄人の仕事から素人のレベルでどれだけ手を抜いて大丈夫か考える)なので、プロ向けのこの雑誌はなにかと勉強になります。


その専門料理ですが、ここ1年ほど、少し毛色が変わってきた印象です(編集長氏が変わったから?)。特集が料理そのものでなく、料理人の考え方に焦点を絞ったようなものが目に付くようになってきました。2013年1月号の「料理界25人の言葉」に始まり、同年10月号は「料理書 人生を変える一冊」ときて、今年の1月号は『対談で探る 料理界 現在・過去・未来」。これまで単発の記事や連載ではあったかも知れませんが、これらは特集そのものが語り系のテキストで押しまくり、料理人の頭の中をのぞき込むような“非実用系”な内容です。非レシピ系でも、経営的な視点が強かった従来の店作り号とも違う印象です。

「25人の言葉」は購入を見送りましたが、残りの2冊は購入しました。

*ちなみに同誌のブログ「編集部だより」も、可成り濃厚なテキストがガッツリと、極めて楽しめます。

個人的には、この傾向は歓迎します。これらの特集が魅力的な理由は、対談号の上柿元勝×菊地美升対談の言を借りれば

「結局、料理って料理そのものだけでなく、誰が作っているかによって変わってくるものなんだと実感しますね」(菊地氏)

「料理には人間性が表れます。その人の考え方や哲学が料理の質を決めるんです」(上柿元氏)

ということでしょう(アンダーラインは筆者)。

自分の食に関する持論に「(適切な)知識や情報があると、よりおいしく食べられる」があります。今食べているものがどんなものか、どういう人がつくってくれたのか、などを知っていれば、一皿を前にしたときに、特に感覚を傾けるべき焦点を絞って味わうことができます。漫然と食べて「おいしい」と感じるよりは、より豊かな食卓になるはずです。

この知識というのは、食材や調理法はもちろん、作る人についても言えるでしょう。たとえば、料理店の常連になる場合には、味が合うことはもちろん、店内+常連客の雰囲気や、料理人/経営者の経歴や人柄というファクターもかなり大きいのではないと思います。そして、人のファクターを知ればこそ、食事としての愉しみ広がります。

レシピについても同じで、それを書いた料理人氏の気持ちやエネルギーの注ぎ方のポイントが分かると、より生き生きと伝わるものが出てきます。実際に調理するときにも、手を抜いていいところとだめなところを見極めるラインが、なんとなく見えてきます。

地方にいて、しかも素人で、という条件では、都市部の著名な料理人氏の店を訪ね、話をする機会を得ることなど非常に困難です。しかし、一連の「語り系」の特集に触れると、今まで読んできたレシピに、どことなく体温が立ち上ってくるような感覚がしてくるのは自分だけでしょうか?

とまれ、今後も(このペースだと半年に一回くらいずつ?)、この路線が継続することを非常に期待します。



======おまけ=====

余談で、個人的要望

これから、どんな特集を期待するかといえば、前エントリの池上先生本ではありませんが、まず古典+歴史シリーズでしょうか?エスコフィエ的なものよりもっと深く、歴史+文化を掘り下げてくれると、非常に興味深い。地方料理/テロワールにしても、気候や環境的な風土だけでなく、歴史的背景も肉付けされると、読み手/食べ手的には、食事をより深く楽しむための貴重な調味料になりそうです。

ただ、それが行きすぎて、かつてのプレジデント誌のような、偉人にまつわる人生訓シリーズにならないことも祈ります。大御所シェフが語る記事ではしばしば、「今の若い奴らは」的なお説教的フレイバーが効きすぎて、どうにもくどい記事がままありますので。

あ、あと音楽や絵画などを軸に、店での使い方+それにインスパイアされたルセット、パーティーの実例集、なんてのも楽しそう。よろしくお願いします。

2014/01/12

池上俊一先生の「パスタでたどるイタリア史」-最近読んだ料理本その1

最近、興味深い料理関係の本や雑誌を読む機会が続いたので、その紹介記事を何本か上げたいとおもいます。その1。

岩波ジュニア新書は、なかなかに興味深い内容について、いろんな大御所が書き下ろしていて、図書館でもそのコーナーはよく覗きます。その時は、タイトル3分、著者7分位で書架を眺めるのですが、そこでこの著者名を発見してしまいました。


池上俊一先生。西洋中世史がご専門の東大教授。著書を何冊か読んだだけでなく、学生の時には一般教養の西洋中世史の授業を、それはそれは興味深く受講しました。かつて朝日新聞の書評委員だった時のキレも最高でした。


その先生による「パスタでたどるイタリア史」。結論をいえば、とても面白い「イタリア史」の本でした。パスタがイタリアの国民食として成立していく過程を骨に、イタリア史の本論がガッツリと肉付けされています。一般の人にもお勧めできる本ですが、池上先生フリークには、中世史の本で見かけがちな 、例のおどろおどろしい挿絵やカタカナの固有名詞もちりばめられていて、相変わらず楽しめます。

 

概要はリンク先の目次をご覧いただくとして、この本の中でも、特に興味深く読んだのが「貧者の夢とエリートの洗練」と題した第3章。

イタリアって、食文化はもちろん芸術や商工業など、素晴らしい文化を誇り、気持ちもそうした文化の華に引かれがちです。でも、この本のイタリア史は一貫して、農民、庶民、母親、女性、地方といった民衆寄りの立場から描かれていると感じます。主題のパスタが、「民衆から広まり、民衆の憧れの食べ物」だったように。

これまで何度かこのブログで書いたように、自分が海外旅行に出かけて行く場所といえば、築地(食市場)とユザワヤ(布地市)と合羽橋(調理器具)。遺跡や寺院/教会系を訪れるもの大好きですが、やはり一番好きなのは、地元の人たちの生活の現場の空気を感じること。



だから、読後、気になった料理といえば、「野菜食い」な時代の農民が食べていた「ミネストラ(野菜や豆の入ったスープ)」や、いつも空腹なナポリの民衆の代弁者たる道化、プルチネッラが夢見た肉団子の入りの「マッケローニ」。旅先で、地元のおっさんが黙々とメシを食っているような食堂に飛び込むのが大好きなので、民衆のパスタを求める原点な食べ物に強く引かれました。
 
そのほかにも、「地方の名物パスタと国家形成」の4章や、マンマの味の背景を詳述した5章など、どの章もパスタを取っかかりにイタリア史の裏表を深掘りするだけでなく、最後はアメリカ移民を通じて世界史レベルまで話が広がるこの一冊。

続編で「お菓子でたどるフランス史」も出ているようなので、こちらも一刻も早く手に取らねば、です。