2012/12/31

宇野重吉系なそば

大晦日ってことで、お蕎麦系のエッセイなエントリです。

地元・越前のそばといえば、なんたっておろしそばです。一家言ある人も多く、自分でそば打ちする人も多いだろうし、店も個性豊かで、人それぞれに贔屓のそば屋があります。

そこで、最近の自分の好みの越前のそば(本稿は基本的にそばそのものについてのみ語ります)はというと、一つは太めの田舎そばを柔らかく茹でたもの。そして、もう一つは個人的に「宇野重吉系」とカテゴライズしているそばです。


俳優の宇野重吉氏は、越前のそばをこよなく愛したとのことで、往事は氏の愛したそば屋はたいそう人気を博していた印象です。福井のMさんとか、今庄のFさんとかが代表的なところでしょうか。麺がピラピラと薄めの食感で、大人しめな味わいは、氏が愛した店に通じるものがあります。食感そのものが柔らかいそばともども、ここ数年来、妙に美味しく感じられるようになってきたそばです。

しかし最近はというと、宇野重吉系は少し勢いがないような印象を抱きます。地元のそば好きの大勢が好むのは、挽きぐるみで色が黒く、太めで固めな噛んでガッツリ旨いそば。もしくは、そば打ち名人系(=コンクールでは審査委員が江戸そばの大御所なため、細くてシャッキリ打たねばならず、そのコンクールみたいなそばを越前スタイルで出す店もなかなかに多くなっている)でしょうか?

そして、宇野重吉系の押しの弱さは、前時代の遺物的に語られるような印象さえ受けます。そばトークしてても、その系列の店の名が出ると「ああ」とか「そういえば」的なリアクション受けたりします。

でも、個人的には宇野重吉系は、もっと楽しまれていいそばだと思います。

それは、どうしてもはっきりくっきりした味が評価されがちな越前そばワールドで、比較的繊細に味わってみたいそばの食感は貴重だと思うからです。そして、もっと重要だと思うことは、越前そばの本当の楽しさは、なんといっても振り幅の大きさ、個性の多様さにあり、往事の“こだわりな店”な仕事のそばが一つのスタンダードとして存在することは、その多様性を下支えする大事なベースだと思うからです。

地域ごとに在来種しか使わなかったり、ほとんど麺の体裁をなさない切れ切れの太い十割そばをハイミーたっぷりの汁で食べたり、越前の各地域には本当に個性的(?)な土着のそばが残っているし、それが一番うまい、って言い張れる人がたくさんいることが、越前のそばの一番の魅力だと思います。

自分が、宇野重吉系や、柔らかいそばの魅力(噛んでるとそばの甘みがしっかり感じられるのが好き)を再発見できたのも、ある山里で在来種を作り続けているおっちゃんと話した時「俺は自分が作ったそばを柔らかく茹でて、自分で作った汁で食べるのが一番」との言葉に、ピンと来るものがあったからです。

個人的に、越前のそばは好きですが、越前のそば好きには時折眉をひそめたくなることもあります。それは、ティピカルな越前おろしそばの味に固執する余り、たとえば更級系などは理解しようとしない態度が苦手だからです。そんなそば好きが「ああ、あれね」とか言いそうな宇野重吉系を改めて食べてみることで、自分の経験からすると、そばに対する蒙を啓いてくれものが何かしらある筈です。機会をみて、ぜひお試しになられることをオススメします。

*このエントリは、数年前にmixi日記で書いた内容をベースに、ほぼ全面的にリライトしたものです。

2012/12/13

ざくろモラセス風味のチキンウイング

前のエントリに続いての、やってみたシリーズ。

各種SNSでは、レバノン方面のレシピ情報などもウオッチしていますが、レバノン版ハウス食品な(って勝手に思ってる)Al Wadi Al Akhdarって会社が、いまいち使いかねていたざくろモラセスを使ったレシピを紹介していました。

ひとつはファトゥーシュ(パン=フブス入りのサラダ)。そしてもう一つがチキンウイングの料理です。

これまではモラセスって言葉の響きから、肉焼いたフライパンに注いでソースにしたり、お菓子などに混ぜ込んだりっていうマーサスチュワート系なイメージを抱いていましたが、このレバノンハウス食品のレシピは、まあ目から鱗。要はバルサミコチックに用いればよかったみたいです。

で、特に気になったのは後者のチキンウイング。この会社のレシピを参考に実作です。 ぱっと見は、バッファローチキンウイングみたいな雰囲気だけど、シナモンとコリアンダーの取り合わせがベースになったフレイバーで、しっかりエキゾに楽しめます。



チキンウイング(メイカーのレシピ)

◎材料
  • チキンウイング1.2kg
  • バター大さじ1
  • オリーブ油大さじ3
  • にんにく6かけ 
  • 白こしょう小さじ1/2 
  • シナモン小さじ1/2 
  • コリアンダーの葉(みじん切り)1/4カップ 
  • ざくろモラセス1/4カップ 
  • レモンジュース大さじ3 塩 

◎レシピ 
  1. バターをソースパンに溶かし、チキンウイングを入れ、オリーブ油、にんにく、スパイスを加えて、鶏をこんがりと焼く 
  2. コリアンダーを加えてかき混ぜ、レモンジュースとざくろモラセスを振りかけてよくからませ、5分ほどなじませる 

サイトに出ているレシピはこんな感じですが、少し作り方をアレンジ。

鶏肉は手羽先と手羽中をミックス。それに塩とスパイスをすり込んで、下味をしっかり付けたものを、揚げ焼きにしました。油はサラダ油系の植物油を使用。コリアンダーの半分は、盛り付け後に振りかけました。

で、一番大事なポイントは、最後の「5分間なじませる」の行程。

皮目のパリパリ感が気になって出来立ても食べてみたけど、「5分間」があった方が、鶏やスパイスのフレイバーとモラセスが一体になるし、ざくろやレモンの酸味も程よく落ち着くし、で断然おいしくいただけます。

ちなみにこの会社、旅行に行ったときに立ち寄ったスーパーでおなじみのメイカー。普段ホンモスやババガヌジ(ムッタバル)の盛り付けにも使う茶色い器は、ファラフェルの素についてきた粗品です。

2012/12/11

ごぼうのソース煮

先日、遠出の電車に乗るのにたまたま買った朝刊(朝日12月5日付・大阪10版22面)を読んでいると、オピニオン面に、このブログ的に可成り気になる投書がありました。


見出しは「伝統の味 ゴボウのソース煮(リンク記事は、会員登録なしで全文は読めません)」。声の主は京都の81歳の方。なんでも、裕福な家庭で育ったこの方の祖母が、貧しい生活に追い込まれ、慣れない台所仕事で醤油とソースを間違えてしまったことからできあがった料理だといいます。そして、それがお正月料理の定番として受け継がれているそうです。

81歳の方のお祖母様っていうと、相当昔だろうから、時代を考えるとなかなかにハイカラな料理。しかも、文面はおろか見出し見るだけで、美味しいことはたやすく想像できます。当然、実作です。



この投書によると、作り方は

皮をむいたゴボウをさっとゆで、ウスターソース100mlにしょうゆ、砂糖を各大さじ1杯、赤唐辛子1本を加えて炊く。

とのこと。

ゴボウの分量は不明ですが、この調味料の分量から察するに、3本くらい入った1パックで丁度いいかと思います。

実作時には、調味料に適量の水を加えて、ある程度ごぼうが柔らかくなるよう30分くらい煮て、最後に煮汁を煮詰めて絡めるようにしてみました。ソースの香辛料の香りと酸味でごぼうの甘さが引き出され、その一方でアクがアクセントになって、予想通りにうまいです。

ただ、上記の作り方ではちょっと味が濃かったので、きんぴら風の味わいを目指さないのなら、薄めで入った方がベターかと。自分でこれから作る時には、飲める程度の煮汁でじんわりと煮含めて、甘くやわらかくごぼうが仕上がった所で、濃い味をつけて煮詰めて絡める、という方法でいこうと思います。

あと、オリジナルにないアレンジとしては、半量はバターでモンテしてみました。これは個人的に必須です。というのも、福井の洋食系ソースかつ丼にしても、百年食堂風ソースカツ焼き飯にしても、動物系なあぶらの風味はソース系の味わいに芯を通し、深めるために欠かせません。

今回、ソースはカゴメとヒカリを50:50で使用しましたが、おかず目的かお酒のお伴か、食べ手の好みがどうか、などによってソースを使い分けるのも楽しそうです。

2012/10/18

フレッシュのチリ

ジェイミーオリバーの番組をみてナントカカントカみたいな話は、このブログでも何度か触れたことがありますが、彼の番組をみていて一番好きなシーンはといえば、フレッシュのチリを刻む場面です。


例えば思い浮かぶのが、アジア風のサラダを作る場面。お醤油とごま油と柑橘の汁を合わせたドレッシングに、「そしてチリ。僕は辛いの好きだから、たっぷりね」みたいなことを言いながら生の唐辛子をブツブツと刻んで(種ごと)加える場面です。

自分では同じ様な場面だと、ピクルスに漬けてある唐辛子を刻んだり、お酢などでほとびさせた鷹の爪を使ったりということが多いのですが、生の唐辛子が市場に並ぶ時期になると、ついジェイミーごっこをしたくなってしまいます。そして、買ってきた生の唐辛子は全部は乾燥させないで、冷蔵庫の隅に少し残しておいて、エキゾチックなお料理に使ったりします。

たとえば名残のフレッシュバジルと鶏の炒めものとか、塩味や魚醤味のプレーンな炒め物系を中心に。

そんなにハードな辛いもの好きでもないので、フレッシュならではの使い方をするわけではないけれど、生の唐辛子をブチブチと刻む手応えは、ここ最近、秋を実感するには欠かせない嬉しい感覚です。

2012/07/05

トマトのためのタブレ

タブレといえば、基本的にはパセリたっぷりのレバノン風。クスクスをふかしすぎた時にはフランス風も年に数回つくることがあります。一般に中心となる具材は、このどちらかだと思いますが、この夏に登場回数が増えているのが、タブレの構成メンバーと味付けはそのままに、トマトを主役に据えた変則タブレです。

具材のバランスでいうと、トマト>>ブルグル(クスクスで代用可)>パセリ、といった感じでしょうか。トマトの味と食感を、ブルグルのプチプチ+モコモコ感が引き立ててくれて、なかなかにいけるルセットです。

◎トマトのためのタブ
  1. トマト(大なら1個、中-小なら2個、フルーツトマトなら3-4個)の種を取り、1.5cmほどのダイスに切る。お好みで皮をむいておく。ブルグル1/4カップを水やお湯でふかしておく。パセリ1/2ブーケは粗みじん。紫タマネギ中1/2個はスライスまたは粗みじん。
  2. ボウルにレモン汁1/2カップ、ドライミント大さじ1-2、お好みのスパイス(今回はオールスパイスとコリアンダー)、塩、こしょう適量を合わせ、EXオリーブ油大さじ1-2を加える
  3. 2にまずタマネギとパセリを馴染ませ、次にブルグルとトマトを混ぜ合わせる
トマトのためのタブレ

例によってじゃばじゃば目に使用するレモン汁の酸味がかなり強力に押してきますが、それでトマトとブルグルの甘みが際だってくるところがポイント。個人的にはドライミントもしっかり効かせます。ブルグルは、サラダには基本的に全粒タイプがお気に入りです。

しっかりしたお肉料理にも、軽めのお魚料理にも、相手は選びません。

あとパセリは、このお料理の場合平べったい葉っぱのイタリアンの方がベター。でも、普通のタブレの場合は、ドレッシングの乗りがよいカールタイプの方が好みです。

そう、くれぐれも野菜の水切りはしっかりと。

2012/07/01

ホンモスロワイヤル

この春、新聞のテレビ欄をみてたら、BSデジタルのところで気になる番組を見付けました。BBC地球伝説という番組で、その回のタイトルは「シェフがめぐる地中海 豊かなる食の旅」。トルコとモロッコの食を訪ねる内容で、みつけたのが丁度放送中の時間だったため、途中からあわてて録画しました。

例によって、ツボにはまる食べ物の連続でしたが、その中で一番グッときたのが、シリアにほど近い、トルコのタルススという町の食堂で出されていたホンモス。

豪華な見かけから、旅人のシェフ氏が「ロワイヤルと名付けたい」と絶賛していた一皿。お皿に盛り付けたホンモスに、茹でたひよこ豆とスマック、コリアンダーの葉、パプリカとにんにくを加えた熱い油をかけてあり、油とスマックの赤やコリアンダーの緑、豆の黄色と彩りが印象的です。

その一皿を、ようやく実作しました。味はもう、見かけ通り!


基本、ホンモスにはにんにくも加えず、豆とごまとオイルのプレーンな味と香りを好みます。ですが、これはこれで、とても賑やかな味わいが素敵です。

にんにくは、テレビではみじん切りでしたが、実作時はパウダーを使ったので、焦げたフレイバーがより軽めな雰囲気。ここにコリアンダーの香りと、スマックのダイレクトな酸味が加わると、一皿くらいはぺろり。フブスと一緒に、栄養たっぷりのランチを楽しめちゃいます。

2012/05/11

ワタリガニの豆鼓炒め

これ、一応苦手克服系なエントリです。

メインの食材は、ワタリガニです。先日のエントリで書きましたが、どっちかっていうと地元では非メジャーな食材で、(例によって)たまたま地元百貨店の鮮魚コーナーで売ってました。

個人的には、ワタリガニの「身は」は大好きです。でも普段は地元で店頭に並んでるのは、ガルフ(=ペルシア湾)バハレーン産の解凍ものばかり。ましてや、蟹=ずわい蟹な土地ゆえ、何年か前に日間賀島で食べたようなとれとれピチピチなワタリガニは、めったにいただくことはできません。

そんな土地で、なかなかに見所のあるワタリガニが並んでいました。富山産。しかも、相当に魅力的な体つきです。実際、包丁を入れてみると、中にはミソと卵がギッチリ詰まっています。

とはいえ、香川ちっくな呼称を用いるならば「かに県」な住民としては、売り場でぐったりしている蟹を買って帰って茹でてみても、如何せん臭いが気になります。日間賀島の蟹のような気持ちのいい食べ物ではありません。

そこで仕方なく、ワタリガニ料理の定番、豆鼓炒めとしたのですが、




◎ワタリガニの豆鼓炒め
  1. ワタリガニの甲羅を真ん中で半分に割り、その半身を三分する。片栗粉をまぶして揚げる
  2. 鍋に油を入れ、にんにく、ショウガ、ネギの香りを軽く出し、刻んだ豆鼓、豆板醤、陳皮を入れて香りと辛みと味を出す。そこに紹興酒で香りを立て、スープ適量を入れる。醤油、砂糖などで味を調え、片栗粉でとろみをつける
  3. 2に1を加え、なじませる。なじんだら、ごま油、または好みの香油で香り付けする

このお料理自体は、バハレーン産のワタリガニでも、味噌汁と並んでつくるおなじみのメニューです。

でも、眼目は苦手克服。

実は、僕自身は蟹味噌がとても苦手で、セイコ蟹でもなんでも、味噌は酢で洗い流して食べるくらいに苦手な味です。メロンやウニにも共通する、リッチで濃厚な時が苦手なのです。牛の霜降り肉もとても苦手で、砂糖と醤油を直接肉に振りかけて調理する関西風すき焼き以外では、食べることがとても苦痛なのです。

でも今回は、ワタリガニならではの肩の部分にみっちりと付いた身とともにこびりついている味噌が、好意的に味わえたのです。油で揚げたことに加え、香りも味も濃厚な豆鼓ソースのおかげで、プラスに転化するのです。

同じような事例として、鱈の白子があります。やっぱりリッチで濃厚系な味ですが...

それが、天ぷらにしたり、ガーリックバターソテーにして、濃厚すぎる味を、さらに濃厚なフレイバーで覆うと、それなりにしっかりした美味しさに転じてしまう、あぶらの味の力。これと同じような効果を豆鼓ソースが演出してくれているのです。

果たして、十分に火の入った蟹味噌は豆鼓ソースとのバッティングで、とても美味しくいただけました。リッチな味わいを好む一般の人の味覚にそぐうかは疑問ですが、同じ様な味覚をお持ちの方には、喜びの幅を広げてもらえるきっかけになるのではないかとおもってのエントリです。

もちろん、この調理によって広がる蟹の身の甘みと旨みの深さ、ビールをあおった時の気持ち良さは言うまでもありません。

特に中華系調理のスキルor食経験のある方には、改めて実践をオススメできるお料理です。

2012/05/10

いちごにシェリービネガーをかけた

去年、食+旅チャンネルでみたパイナップル+モラセスを実作した際、積み残したままだったいちご+シェリービネガーも、この春、ようやくチャレンジJOYできました。やっぱりスペイン人の味覚は正しすぎ!これも鉄板の取り合わせでした。


パイナップルの時のエントリにも書きましたが、この実作にあたってお友達の菓子職人さんと味の作り方について軽くディスカッションしました。それは砂糖の使い方なのですが、彼女の示してくれた方向性は「グラニュー糖で、いちごの甘みを軽く補う」行き方。

実際にやってみると、たぶんこれは正解です。すっきりといちごの香りが活きて、その上でビネガーの香りが吹き抜けて、後味も切れる。オススメです。

でも、僕自身は相当に甘みの感覚が振り切れていて、べったべたに甘い味が、美味しいというよりむしろ気持ちよく感じる体躯になってしまっているので、結局、砂糖の風味がガッツリ押してくるカソナードをたっぷりと振りかける行き方に振り戻ってしまいました。でも、決して一般の人にお勧めできるものではありません。

さて、こんないちごを食べたい場面はやっぱり夕食の後。たまたま家にあった、甘めのシェリーを合わせてみたりしたのですが、自分はどうしてもいちごを甘めにしてしまう分、シェリーはティオペペみたいな食前向きっぽいドライ系と一緒の方がよかったみたいです。となると、いちごの甘みを抑えると、食後向けのシェリーとの相性がもっと引き立ったのかしら?

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追記 18/05/2012

きょう、みるからに露地ものな愛知産のいちごで、このシェリービネガーがけをやったところ、かなり最高です。これから出てくる、小粒だけど風味の強い、そんないちごだと、うまさ倍増。とてもオススメします。

いろいろと貝を食べた話

この春は、日頃いただくことのできない貝を食べる機会に恵まれました。

その1 ムールで満腹になった!

福井日仏協会の会員の一人が、ムールを食べる会を開いてくれました。



ムールですよ、ムール!当然、フリットと白ワインも。約25人の参加者に対して、用意されたムールが20kg超。一人当たり1kg弱って、すごい量だとおもうけど、ムールでお腹いっぱいにして、みんなで食べちゃいました。



この山積みなムールは、パック詰めされたカナダ産だとか。案外フレッシュを使うより、こんなタイプの方が下処理の手間がなくて楽ちんだそうです。

食べ方は、当然白ワイン蒸しなんですが、3回の大鍋はセロリを効かせてみたり、パセリが効いていたり、パプリカが入ってオリーブ油も香るプロバンス風だったりと、飽きずに楽しめました。そう、鍋からは大きめのカップを使って、ガガーってたっぷりすくって取り分けます。ひとすくいで、日本の普通のレストランなら余裕で1人前な分量です。



こんなムール祭りは、実は以前からの憧れ。これにピラフ詰めも加わって、前菜にメゼとかを軽くそろえてみたりすると、さらに自分好みで楽しそうです。

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その2 馬刀貝の缶詰


酒屋などの店頭に、国分が出してる缶つまというシリーズが並んでいます。オイルサーディン系や魚介味付け系など和洋の定番の中に、たこのガリシア風などスペイン系のものもいくつか。そこで、グッと俺の心を掴んだのがGlobal Tourというシリーズにあった馬刀貝の水煮です。そのまま食べましたが、なかなかに嬉しく楽しめます。



というのも、この馬刀貝。とても魅力的な貝なんですが、残念ながら地元の福井県ではあまり流通していません。保守的な県民性もあるのかしら、それとも身近に新鮮な魚介類が溢れているためかしら、あんまり馴染みのない太平洋側っぽいものや東北っぽい食材への関心は低めな雰囲気で、それらは希に地元百貨店の魚売り場で見かけるほかは、ほとんど目にする機会がありません。

馬刀貝もそんな食材の一つ。なかなかにお値段する(買値は500円超)けど、また暑い夏の日の夕方にキリっと冷えた白ワインを飲みたいような時、手を出してみたいアテではあります。

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その3 タイラギとミル貝にも、つい手が伸びた

4月に三重県まで出かける用事がありました。名古屋経由です。食いしん坊としては、名駅の百貨店の地下食品売り場も当然のぞきます。その鮮魚売り場で、またまた俺の心を掴みやがったのが、シャコとタイラギ、そしてミル貝です。

前述のように、地元ではほぼ口にできない食材です。でも大好き。



帰宅まで約2時間ありますが、まだ暑い季節ではなかったため生食用で買ってしまいました。そして当日、シャコと、貝の半分量はお造りでいただきました。んまい。

残った貝は、その日のうちにさっとボイルしておいて、翌日はアスパラとの炒め物です。ミルもタイラギも、生は生で風味、歯ごたえとも気持ちよいんだけれど、味わい的には火を入れた方が好みです。ショウガとネギを効かせた中に、ちょこっと唐辛子の辛みも通して、シャッキリと。

貝好きとして、なかなかに満足できた春。そういえば、北海道物産展でホッキカレーも買ってきて食べたっけ。こうなると、なんとかランビ(コンク貝)を入手して、豪快に焼いたり、コロンボにしたりして楽しんでみたくなってきます。

2012/03/30

ルバーブの株ももらった。

前のエントリの赤そらまめをいただいたのは、実は、この株をわけていただきに出向いたついでにです。ここ1,2年の大のお気に入り、ルバーブです。

ルバーブの苗
以前は食べる経験がなかったし、購入できる機会もないし、ずっとルバーブというものに魅力を感じたことはなかったのですが、昨年、たまたまいただいたルバーブを定石通りにジャムにしました。その当時に丁度、来客がある機会があり、そのジャムをkiriチーズにのせて、軽く潰した赤胡椒を振って、先付けのような三点盛りの一品として出したところ、これが極めて大ヒット。

ルバーブとキリチーズ
ジャムはその後、朝ご飯のベーグルのお伴として、ワインのアテとして、kiriチーズと一緒に、いつの間にか消費されてしまいました。個人的には、ベーグルやチーズとの相性は、ブルーベリーよりルバーブの方が断然好みで、今ではとてもお気に入りの食材です。

そんなこんなで、いただいた方に激しく謝意を伝えたところ、こんどは株までいただけることになりました。家にはこの株を植えられる場所がないので、親戚の家の畑にでも植えさせてもらって、またジャム生活を楽しめればと思います。

いや、ほんとルバーブはいいもんですよ。贅沢にジャムにするなら、赤い部分だけを煮込むと色がとてもきれいでよいそうです。

越前赤そらまめをもらった

地元の在来種で、越前赤そらまめというのがあるそうです。先日、知人から冷凍したものをいただき、初めて知りました。地元の伝統野菜といえば、福井新聞社が1998年に発行した「ふくいの伝統野菜」という本には出ていません。そこでググってみると、種屋さんの販売サイトに行き当たるところをみると、地域に根ざして生産されてきたようないわゆる伝統野菜とは、また違った由来があるのかしら。

このお豆。利用方法はご飯に炊き込むのがデフォとのこと。皮から色が出て、赤飯のように赤いご飯が炊きあがるそうです。

それで、早速実作してみると、

なにこれ!

越前赤そら豆ごはん
カリブ飯体質からすると、お茶碗に盛るより、お皿に盛って、ジャークチキンやロニョン焼いたの魚のフライのせたり、ちょっとスパイス効かせて煮込んだお肉(中南米的フリカセとか)をかけたり、豆オン豆でプエルトリコ豆のせる無茶も有りって感じがする。サラダとアボカドも添えたい。

そらまめといえば、最初に浮かぶ外国語がフールってアラブ飯脳で考えてみると、フール=ターメイヤ>エジプトって発想が飛んでいくので、モロヘイヤかけちゃったり、マカロニとトマトソースとタバスコかけてコシャっちゃったりするかもしれない。

皮もやわらかくて、フールメダミス(そら豆のあっさり煮)に使う小粒乾燥豆みたく、そのまま食べられます。これ地元のエキゾ飯好き的には、かなり魅力的な食材かもよ。

2012/03/04

ロメインレタス入り牛挽肉の炒飯(牛崧炒飯)

ファーマーズマーケット通いで、最も楽しみにしている野菜の一つがロメインレタスです。しっかりとした食感に、味濃く、気持ちの良い苦み。普通にサラダにするだけでなく、芯に近い部分を匙代わりにしてレバノン風タブレや、ディップ系なお料理をすくって食べてみたり、食卓を楽しく広げてくれます。幸い、地元の生産者さんが、ここ数年出荷してくれています。

このお野菜の使途として、ずっとやってみたかったのが炒飯の具。海鮮系塩味炒飯や、プレーンな牛挽肉炒飯(牛崧炒飯)などには普通のレタスを加えるのがすっかり定番ですが、今回はロメインレタス個性を生かすため、強めの味で。

ロメインレタス炒飯
ロメインレタス入り牛挽肉の炒飯(牛崧炒飯)

  1. 牛挽肉のそぼろをつくる。牛挽肉をさっと炒め、ショウガ、醤油、みりん、砂糖などで煮る
  2. 炒飯をつくる。油を熱し、溶き卵をふんわり炒め、ご飯を加えてほぐし、1を加えてなじませる
  3. 火を止めて、2に1cmほど(葉の部分は1/4幅、芯に近いところでは1/2幅に切る)に刻んだロメインレタスを加え、鍋を振ってなじませる

ロメインレタスの場合、普通のレタスより強い味をより際だたせるため、かなり大きめに切ります。でも、余熱でほどよくしんなりするため、大きさは気になりません。

そぼろを使うことで、普通の牛崧炒飯より味を濃いめに振ったことで、この大きめ、強めなロメインレタスとのバランスを取ります。文句なく、その方がうまい。叉焼などを使う場合でも、味は醤油ベースで強めな方がよいのではないかと思います。

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ところで、このロメインレタス炒飯。最初に思いついた時は、こうした濃いめ肉系ではなく、むしろ海鮮系な味でした。

理想はやっぱりハムユイ炒飯。

でも、なかなか地方だと入手が難しいので、代替品としてはへしここんか鰯など、土着の発酵系魚介品を使って実作できないかとおもっています。この場合は、卵は炒めて別容器に取った後、油でへしこなどを炒め、香りを立てるのがとてもおいしそう。オリーブ油+アンチョビで実践しても楽しそうです。

似たような路線では、黒オリーブ系な具を使った炒飯というのも、なかなかに気になるところです。実践した折には、またブログで報告します。

2012/02/28

ヴァニラウオッカにコーヒー豆を浸した。

美味すぎて困る食べ物といえば、このブログで「鍋焼き卵ごはん」をご紹介しましたが、お酒で同じように困るものといえば、アブソリュートのヴァニラウオッカです。

基本、お酒でもお茶でも着香(フレイバード)ものは苦手で、必要な時にだけシロップやリキュールで補えばよい派です。でもこのお酒だけは例外。ヴァニラの濃厚な香りは、香水もバニラ系強めが大好きな自分のド真ん中。糖分な甘さはないはずなのに、甘くてたまらない味わいの演出に、メロメロです。

何年か前に、地元の馴染みのバーで教えてもらって以来、とにかくやみつきです。昨夏までは、家にボトルがあると飲み過ぎて危険そうな気がしていて、バーに置いてある時にのみ飲むお酒でした。

その飲み方は、ストレートやロックもうまいけど、お気に入りは食後系なフレイバーを加えたウオッカベースカクテルな行き方。コーヒーリキュールを入れてブラックルシアン風、カカオリキュールを入れてジンなしのルシアン風、ホワイトカカオとGET31で白いチョコミント風にすることもあります。

でもリキュールを入れて気になるのが、その甘さです。

ところで、今年もお菓子を食べて蒸留酒を飲む会の第二弾が計画されました(期日が雪だったため延期中)。その会に、今年はヴァニラウオッカ持参しようと、期日前日の金曜日に会場のカフェに出向き、いつも通りにコーヒーをオーダーしたとき、いたずらを思いつきました。

珈琲ウオッカ
6-70mlのウオッカを小瓶に取り、そこにコーヒー豆を3粒。
これで、甘くないブラックルシアンができれば最強なんだけど...

=====5日後=====

そして、水曜日。

珈琲ウオッカ5日目
無色透明だったウオッカは、ほんのり黄色く色づいています。香りは、やっぱりヴァニラの濃厚さが支配的だけど、瓶を振ったりして空気が揺らぐと、コーヒー色の肌がのぞきます。

それならば、口に含んでみると。

これが瓶から香りを聞くのとは大違い。今はまだ気温が低いためか、瓶の中ではすっかり縮こまっていた印象ですが、口内に放り込むと、ファーストコンタクトの舌に触れた途端から、ボワっとコーヒーの香ばしさが上がります。体温のおかげでしょう。甘さがないのも、このウオッカの場合は大正解です。

この感じなら、3日漬けでもいいかも。少なくとも、ハードなヴァニラ好きにとっては、よりベターな選択です。この場合、より繊細な香りの上がりを引き出すため、ロックよりもストレートの方が楽しめるかもしれません。

******
ちなみに、

最近、バーでよく飲むのは冷えてないタンカレー。小さめのオールドファッショングラスなど広口のグラスで、キレよりも、ぬるめのジンから上がる香りを楽しむことが多いです。上記ヴァニラウオッカの飲み方も、多分にその気分を引きずっていると思われます。

2012/02/20

餃子の王将風ポパイ炒め

なんでも東京方面の王将ブームは一段落っぽい雰囲気らしいですが、王将といえば家でもわざわざ再現するメニューがひとつあります。

それがポパイ定食の、ほうれん草と卵の炒りつけ。

少し肌寒さを感じ始めたころ王将を訪れて、このメニューがカウンターから見上げたところに張り出されているのを見つけると、嬉しくなってつい注文してしまいます。王将らしい濃いめの味と、卵のまろやかさの力で、ほうれん草のアクを和らげつつ、お浸しなどでは得られない味の主張もあるところが楽しい食べ物です。

で、冬場のアク(=シュウ酸)の弱そうなほうれん草をたくさん買い込んだような時、自宅でも似たようなお料理をつくってみるようになりました。

ポパイ炒め

ポパイ炒め(=ほうれん草と卵のいりつけ)
  1. ほうれん草1把をざく切り、たまねぎ小1/2個は厚めのスライス、人参少量はは短冊切り。豚肉50gは食べやすい大きさに切り醤油、紹興酒などで下味をつける。やわらかくしたいなら重曹も少々
  2. 卵2個を溶き、油大さじ2でふんわりと半熟に炒め、容器に取っておく
  3. 鍋に油少々を熱し、たまねぎ、にんじん、豚肉を軽く炒める。豚肉の表面の色が変わったら、ほうれん草を加え、鍋を一振り
  4. 3の鍋の真ん中を開け、そこにに合わせ調味料(オイスターソース大さじ1、醤油大さじ1、砂糖小さじ1、スープ大さじ3-5を合わせておく)を加えて煮立たせる。水溶き片栗粉でとろみを付ける
  5. 鍋を2-3回振って、具材に調味料を絡める。そこに2の卵を加えて、ほぐしながらもう2-3振り。ごま油をたらす

試行錯誤を繰り返して落ち着いたこのレシピのポイントは、調味料にとろみを付けたところに卵を入れて全体に柔らかい仕上がりにすることと、卵とほうれん草には最小限の火しか入れないこと。その結果、食感がとろりふんわりと気持ちよいだけでなく、ほうれん草のシュウ酸テイストの汁への流出を抑えつつ、卵だけでなくとろみでのコーティングも図られて、アクの部分を個性として楽しめるようになるのではないかと思います。

もちろん豚肉は、手間をかけられるなら湯通し/油通ししてもよいのですが、このお料理の場合、他に湯通しする食材がないため、省略しました。

2012/01/28

Gerbleビスケットについて

みなさん、フランスの「Gerble(ジェルブレ)」ってブランドの栄養ビスケットが発売されてるのをご存じですか?ブランド名は胚芽と小麦を意味するフランス語に由来。小麦胚芽配合、ブラウンシュガー使用、保存料不使用、着色料不使用などの特長があり、フランスでは女性を中心に健康によい食品として認知されているそうです。詳細は国内サイトを参照していただくとして、

gerbleビスケット
*すみません。ビスケットの並びは箱と逆で右が全粒粉で、左がアップル&ヘーゼルナッツです。

国内の取り扱いは大塚製薬で、昨秋から本格全国展開の模様。その営業担当の方が、フランスの製品をフランス好きの人に知ってもらおうと、昨秋開かれた福井日仏協会のイベントに参加され、試供品もいただきました。

なんでも地元・福井県内でもスーパーの店頭への展開も始めており、百貨店にも専用コーナーが設けられています。営業担当者に話を聞くと、ホームパーティーでワインやチーズと一緒に食べてもらったり、午後お茶の時間のお伴にしてもらったり、って消費形態を狙っているみたいです。

でも、個人的にはこの商品が一番マッチする場面、人たちって別のところだと思うんです。

それは、コーヒーショップをよく利用して、しかも、オフィスまで持ち帰ってコーヒーを飲む人にこそ、このビスケットの味と栄養機能が生きてくるとおもうんだけど、どうでしょ?

日本だとビスケットっていうとおやつなイメージだけど、フランス映画も大好きなフランスかぶれ視点からすれば、むしろカフェオレボウルでコーヒーがぶがぶ飲みながら、簡素な朝ご飯に摂るものってイメージも濃厚に浮かびます。

また、コーヒーショップを利用する人って牛乳やら甘みやらたくさんはいった、なんたらモカとか、なんたらマキアートって類の飲み物を好みそうな印象なので、そんなコテコテした味と一緒だと、むしろGrebleの抑えめな甘さと、小麦胚芽も入ってボソボソした食べ心地が、逆にマッチするんではないかと。

就業前や、残業前などの時間、パンをもそもそ食べてるより、ビスケットをぱくぱくしてた方がなんかスマートっぽくありません?さらに食感も、健康にいいもの食べてる感もある。

個人的には、朝イチでクルマで出かけたり、ちょいと用事をこなしたり(最近だと雪かきもあることだし)って場面で、缶コーヒーでガーンと血糖値を上げて勢いをつける時、一緒にこのビスケットを摘んで、軽く胃を落ち着かせるって使い方に重宝しています。

2012/01/27

あちゃら漬け

僕が俳句をしていることは、このブログで書きましたっけ?某結社に所属してわりとマジメにやっていて、結社の京都の句会にもよく出かけます。

その句会の後の飲み会の、さらに二次会で立ち寄る飲み屋さんでは、1月にあちゃら漬けを出してくれます。店のおかあさんの手づくり。例年1月の句会には参加できることが多く、さらに泊まり日程でこのお店に行けることも多いので、個人的にあちゃら漬けは、京都の一月を一番強く感じられる食べ物だったりします。

さて、そのあちゃら漬け。漢字で書くと阿茶羅漬け。新年の季語です。
手持ちの俳句歳時記・新年(平凡社)の解説を読んでみると

京阪地方の正月料理。守口大根または蕪を小さく刻み、これに昆布を刻んだもの、及び紅唐辛子の小さなものを少し入れ合わせ、三杯酢に漬けたものである。
とのこと。さらに広辞苑によると、「あちゃら」というのはペルシア語のachar(2つのaの上に音をのばすような記号あり)に由来するポルトガル語だとか。

でも今年は、日帰りで京都の句会に出たため、あちゃら漬けにありつくことができませんでした。そうなると、なんだか寂しい。てなわけで、記憶を頼りに実作してみることにしました。

あちゃら漬け
あちゃら漬け
  1. 蕪中3個の皮をむき、1cm角のダイス状に刻み、塩をしてしんなりさせる。
  2. 漬け込む酢をつくる。酢カップ1/2、砂糖カップ1/4、鷹の爪1本(種を切り小さく切る)、昆布5cm角ほど(小さく切るまたは折る)を合わせる。薄口醤油、塩などで味を調える
  3. 1と2を合わせて漬け込む。

実作前にいろいろレシピをネットで調べてみたのですが、出てくるのはスライスした蕪を漬け込むものが目立ちます。でも記憶にあるのはダイス状のもの。この方が、箸で一つ一つ摘みながら、ボチボチとお酒を飲むのには、気分とリズムが整うように思えたので、記憶を優先しました。

ただ、記憶の中のものは5mm角くらいとより小さいんですけれど、そこは家庭の味として食べ応えも増しておこうと、大きめにカットを採用です。

キューネの瓶にあちゃら漬け
漬け込みに用いたのはキューネのザワークラウトの瓶。樽型の形もかわいいし、広口で使いやすいし、この瓶は便利ですね。

追記
あちゃらの語源のacharって、インド方面料理でよくきく「アチャール」とも同じルーツっぽい雰囲気ですよね。