2010/03/29

シリアで教わったホンモスのレシピ

シリアの食堂の定食
ニッポンでも、ホンモスは好きな人は大好きなお料理です。アラブ飯好きとしてはうれしいことなのですが、半面、なんか違和感を覚えることもあります。

というのも、ニッポンでのホンモスの扱いは、しばしばイギリスやアメリカなど、アングロサクソン系の国に滞在したことのある人たちが、彼の地で人気だったベジタリアンフードとして語っているケースが多く見受けられるからです(ファラフェルもそうだけど)。

そして、そのできあがりの画像をみると、自分の思っているホンモスとはほど遠い、まるでパテドフォワ(レバーペースト)のようにゴワゴワした代物がでてくることがままあるのです。とても、薄いフブスアエーシでは、掬うことなんか不可能そうな雰囲気です。エスニック系料理が得意そうな某有名料理研究家も、イギリス人に教わった、として、まさにこのようなホンモスをテレビで紹介していました。

個人的には、日本語表記がフムス、ホモス、ハマス(トルコ系の影響もある??)など、三音節なものに、ややアングロサクソン経由なレシピっぽい雰囲気を感じます。

カレーやパスタのように、アングロサクソン系経由なレシピが、徐々に本国系レシピに置換されていくのは、時間が解決してくれることと願っていますが、日本国内でのゴワゴワフムスの圧力に負けないため、僕のホンモスレシピのベースとなっている、シリア・ダマスカスのオールドダマスカス(旧市街)の食堂で教えて貰った、レシピを紹介しておきたいとおもいます。

ホンモス

1 ひよこ豆を柔らか目にゆでる(皮は剥く)

ホンモスの豆
2 1をフードプロセッサーに入れ、回す。適宜水またはゆで汁を加え、柔らかくするとともに、攪拌しやすくする

ホンモス回し
3 タヒニ(または練り胡麻)を加える

ホンモスタヒニ入れ
4 レモン汁を加える(写真で入れているのレモンパウダーのようなものだとか。クエン酸?)

ホンモスクエン酸入れ
5 塩で味をととのえつつ、なめらかでクリーミーになるまでよーく攪拌を続ける

ホンモスできあがり
ブログのタイトル写真にもなっている、そら豆のあっさり煮(フールメダミス)もいただいた食堂でランチメニュー(本エントリの冒頭の写真です)をいただいている時、お店のおにいさんが、突然、ホンモスづくりをはじめました。彼はアラブ語しか話せなかったので、具体的な話はなにも聞けなかったのですが、ごくカタコトのアラブ語と、身振り手振りと観察で覚えているレシピです。

かかった時間は10分くらい?とにかく、長い時間、大きなフープロ(?)を回し続けて、フッワフワのとろとろです。水は、レモン汁を加えない分(粉を入れるだけだから)、最初にけっこうドボドボと豆が浸るくらいに注ぎ、その後も、相当やわらかくなるよう、差し水をしていました。

家庭でも、調整しながらフープロを回していると、写真のように丸くフワフワに膨らんで回ってくる頃合いがやってきますので、写真の状態は一つの参考になるとおもいます。

そういえば、缶詰のホンモスをアラブ人(パレスチナ系)の友達にあげたときも、彼はそれにタヒニを加えてよーくかき混ぜて、フワフワにしていました。

あと、一般的なメニューとの大きな差異は、にんにくを使っていないこと。個人的な印象としては、シリアで食べたご飯は、レバノンと比べるとにんにくは控えめな印象でした。世界中にホンモスが広がったのは、レバノン系住民による力も大きそうだから、にんにくが入ったルセットが標準になるのは道理なのですけれど、個人的には、この食堂のルセットを支持します。日本人的にも、豆の香りが立った方が好まれるのではないかとおもいます。

あと、レモン汁は、あるならばそれを使った方がよいのではないかと。現地では、マハシー煮る時にも、クエン酸みたいなパウダーを使うって話を読んだこともあるのですけれど。

そうしてできあがったホンモスを、お皿の周りに土手をつくるように盛り、みんなで一つ皿の料理をシェアしてつつきあいながら一緒にいただくことこそ、レバノン料理(=アラブ料理?)の大事な心なのだと、旅行の現地ツアーに参加したとき、各国からの参加者に対して、ガイドさんは言っていましたよ!

ちなみに、ホンモスとならぶ有名ペーストといえばババガヌジ(ムッタバル)ですが、パーティーなどで、どうも人気がなさげです。茄子と胡麻の香りのバッティングが駄目とか?

パセリのポタージュ

レバノン料理好きのため、たぶん普通の日本人の平均よりは相当多めのパセリを消費しています。だから、安価で状態のよいパセリをみると、ガンガンにかごに突っ込んでしまう習性が身についています。

すっかり春めいてきた昨今、ファーマーズマーケットにもパセリが出はじめました。新鮮で柔らかいパセリが安価で入手できるため、ファーマーズマーケットにパセリが並ぶ時期には、固くてごわごわな、通常の流通経路にのったパセリに手を出すことはずいぶん少なくなりました。

そんなふうで入手したパセリですが、外国の料理本の表記にあるような、まさにブーケと呼ぶべきパセリの束を目の前にして、いつもタブレぢゃなあ、って気持ちが巻き起こるとともに、目の前にある生クリーム(白菜に使った残り)が、なんかささやきかけてきます。

そこで、ポタージュにすることに。いろいろググったレシピを参考にしながら、勢いでつくってみました。

パセリのポタージュ
パセリのポタージュ(2人前)
  1. パセリ2把を塩を入れた湯でさっとゆでる
  2. バターで玉葱小1/2個nのみじん切りを軽く炒め、透き通ってきたらスープを加え煮る。さらに1のパセリを加えて、パセリと玉葱が柔らかくなるまで軽く煮る(色がなくならないよう注意)
  3. 2をミキサーなどでポタージュにする。
  4. 3を鍋に戻し、生クリームを加え、塩胡椒で味を調える
ひさびさの分量表記をした理由は、どれくらいのパセリを使うかの目安のため。日頃からタブレをわしわし食べている身としては、これくらいパセリ味がするのが普通です。

あと、ファーマーズマーケットといえば、クレソンも相当安くでています。生産者の近所の川に群生でもしているんでしょうか?これもたっぷり買ってきて、同じようにポタージュにすると、それはそれは美味しいのではないかと、楽しい想像が膨らみます

小さめの白菜をクリーム煮

ファーマーズマーケット系なお店で野菜を買うことの楽しみの一つは、一般の流通経路に乗らないような、規格外の野菜を買えることです。

その最たるものが、小さい人参。あれをみると心が躍り、コンフィにするか、オレンジ煮にするか、ココットにするか、それとも新しい料理に挑戦してみるか、ワクワクが止まりません。

そんなファーマーズマーケットで、最近手にしたのが白菜です。ただし、普通の白菜より、相当小さい。長さ20cm程度。そのまま縦割りにしても、お皿に載るサイズです。

これもファーマーズマーケットのおかげでずいぶんと改善されているとはいえ、地方に住んでいると、特殊な野菜の入手は可成りかぎられてきます。進取性に富む生産者さんはイタリア料理がすきなのか、そちら方面のお野菜はけっこう出てくるのですが、中国系となると、限られてきます。

もちろん、広東白菜も、地方ではまあ、お目にかかることがありません。

だからこそ、小さめの白菜をみると心が躍ります。成長した白菜より、緑と白のコントラストがはっきりしたこのお野菜をみると、広東系中華魂が騒ぎ出します。

そんなわけでの、クリーム煮です。

白菜のクリーム煮
もちろん、干貝煮も好きなのですが、色目を考えると、やっぱりクリームにとどめです!

白菜のクリーム煮

  1. 縦に6-8つ割りにした白菜を多めの油でさっと炒め、そこにお湯を注いで、白菜に6分くらい(余熱で8分まで)火を入れる
  2. 鍋にスープを熱し、日本酒、塩、砂糖などで味をととのえ、生クリームを入れてソースに仕立て、片栗粉でとろみをつける
  3. 2に1の白菜を入れ、軽く煮立たせながらソースをからめ、仕上げに少量のバターを入れる(軽めのモンテ)

このレシピの家庭での実践ポイントは1。お店のように、白菜油通しなんてできないけれど、そこを炒め+茹でで省略しても、それなりの味のコクは加わります。さらに、焼き色が付いてしまうことも、それはそれで、味のアクセントになってたのしいものです。

普通の白い白菜でつくる時は、気持ち柔らかめでソースが馴染んだ方が美味しかったりもするけれど、若い白菜の場合は、色と歯ごたえが命。火の入れすぎにはくれぐれもご注意を。

2010/03/16

苦手克服**カリフラワーのグラタン

てなわけで、苦手克服シリーズの続き。
個人的に野菜の苦手は、カリフラワーです。

カリフラワー
おなじく嫌いな人も多い食材だとおもいます。あの臭い、あの食感、そして、欠点を補うには、余りにも心許ない味の押しの弱さ。

でも、さんざん臭いものを食べ、苦手食材も理性的な対応で弱点を長所に転換してきた今なら、克服できそうな気がする、ってことでカリフラワーをファーマーズマーケットでかごに放り込みました。

メニューは、定番中の定番、グラタンです。

カリフラワーのグラタン
◎カリフラワーのグラタン
  1. カリフラワーを茹でる
  2. フライパンにバターとにんにくを入れ、弱火で火にかけて香りを立てる
  3. バターが温まり、にんにくの香りが立ったら、薄切りにした玉葱を入れ炒める
  4. 玉葱が透き通りかけたら、カリフラワーを入れ、バターを絡めながら色づかないように炒める
  5. 4にベシャメル適量をからめ、一煮立ち。さらに生クリーム適量を入れて、もう一煮立ち
  6. バターを塗ったグラタン皿に、5の玉葱+ベシャメル、カリフラワー、ベシャメル、チーズ、バターを乗せ、高温のオーブンで焦げ色がつくまで焼く
じつは、カリフラワーのグラタンは以前にもつくったことがあります。茹でたカリフラワーにベシャメルとチーズをかけて焼いて。でも、やっぱりだめでした。今回は、その教訓をいかしてのルセットです。

まず臭いは、バターににんにくの香りを移し、それを炒めでカリフラワーに含ませることでマスキングを狙います。そのあぶらと、ベシャメルで、カリフラワーを軽く煮ることで、苦手な人にはボソボソと感じる食感の解消を図ります。

実際やってみて。

やっぱりカリフラワーは苦手。でも、このルセットなら、なんとか食べられないでもない、っていうか、残ったものをランチに温め直してたべたら、けっこうたのしい。一晩置いておいたことから、よりベシャメルとカリフラワーがなじんて、苦手な部分が落ち着いて、より食べやすい味になったからかも。

カレーじゃないけれど、一晩おいた味の魅力はなかなかに捨てがたかったので、温かな休日のお昼ご飯のために、またカリフラワーに手が伸びることもありそうです。

2010/03/13

野沢菜の醤油漬けを・・・

信州といえば、の野沢菜ですが、時たま、お土産などで醤油漬けを貰うことってありませんか?そしてぶっちゃけ、醤油漬けって好きですか?

個人的には、味も香りも醤油の押しが強すぎて、どうも苦手です(野菜のお漬け物は、味噌漬けも苦手なものが多い)。うちの家族もそろって、苦手です。きょうのエントリは、同じような嗜好の方が、お土産で醤油漬けを頂いた場合に活用していただければ、という趣旨のものです。

アプローチは二つ。

1つ目は、醤油の個性に自分が歩み寄る方法。マイブームの土鍋ご飯に混ぜ込んでいただいてみました。

野沢菜ごはん
◎野沢菜の土鍋ごはん

  1. お米を洗い、土鍋に酒、昆布と水が薄く色づく程度の醤油を入れ、適宜浸水
  2. 少しこげが出来るくらいに火加減を注意してご飯を炊く
  3. 細かく刻んだ醤油漬けの野沢菜をのせ、蒸らす
  4. 唐辛子を振りかけ、ご飯と野沢菜をよくかき混ぜて供する

ポイントは、ギリギリ香ばしくおこげができるくらいの醤油を入れてご飯を炊くこと。ご飯自体が醤油の個性を、おこげでプラスに転化させることで、過剰に感じている漬け物の醤油の個性に歩み寄るためのステップにするという狙いです。

お友達関係でいえば、ちょっと苦手な奴だったけれど、そいつが打ち込んでいる趣味を少し理解してみると、なにげにいい奴なんぢゃん、って感じるようになった、って効果を狙うみたいなかんじ?

あくまで味は野沢菜本体の味で決めます。

それから、仲を仲介してもらうために、唐辛子は香り優先。今回は韓国唐辛子(中国産ではない)を使用です。

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2つ目は、その個性を料理自体のエッジとして強調するアプローチ。

野沢菜スープ
◎野沢菜肉糸湯(野沢菜と細切り豚肉のスープ)

  1. 煮立てたスープに、細切りにして下味を付けた豚肉、しょうがの薄切りを加え、肉をほぐしながら煮る
  2. 肉がほぐれたら、細かく刻んだ野沢菜を入れて、さらに煮立てる
  3. 醤油、紹興酒、砂糖、塩などで味を調える
  4. 片栗粉でゆるくとろみを付け、小さめの小口切りにした葱を入れる。ごま油など香味の油を垂らす

醤油という調味料の個性そのものを、酸味が出るなど発酵が進んだ漬け物の個性と同じようにとらえて、ぶん回してしまおうって狙いです。

具体的には、中華食材の雪菜とか搾菜のイメージで。搾菜肉糸湯のザーサイの代わりに野沢菜を使ったスープで、豚のあぶらと醤油、紹興酒の個性をバッティングさせます。

結果的に、大っきな一袋の野沢菜を、それは美味しく、楽しく堪能しました。油炒めとかおやきとか、信州定番の食べ方もありましょうが、自分の好きなフィールドで苦手な食べ物の食べ方を考えるのも、結構たのしい作業ですよ。

てなわけで、次のエントリにつづく・・・

2010/03/09

世界一臭い缶詰を食べた(Surströmming)

お料理ネタではないんだけれど、

世界一臭い缶詰といわれているシュールストレミングSurströmming以下シュールさん)を食べる機会に恵まれました。お友達に、極度の発酵食品好きのTさんという方がおり(自宅でさばのなれずしやへしこを漬けるつわもの)、その方が入手したものをお相伴にあずかった次第。

シュールの缶(写真は開缶のイメージ)
先に、結論を述べます。

個人的には、なんとかオッケイでした。また食べたいかっていうと?だけれど、その場では、せっかくの機会だからちゃんと食べておこう!って積極的に食べたくなるくらいには食べられました。臭いはたしかに強烈だけど、なんとか耐えられるくらいには慣れたのかも。

参考までに、個人的な臭いものへの耐性はというと、鮒ずしは大好き、納豆臭い程度ならウオッシュチーズもわりと好き。あと、ロニョンはちょっとアンモニアフレイバーが残っても個性の範囲内だとおもいます。でも、くさやほやの塩辛は苦手です。シュールさんの位置は、苦手寄りな、両者の間にポジションあたりです。

そういえば、北欧つながりで、リコリス菓子(サルミアッキ)も大丈夫だった。

さて、その食べる会のレポを。

今回いただいたシュールさんはスウェーデンOskarsというメイカーのもので、腹には卵や内臓も入ってました。

開缶作業は、地元の河原で。

缶を開ける
テレビなどでは、発酵が進んでパンパンに膨らんだ缶から、お汁がブシューって吹き出す画がおなじみです。しかし、今回のシュールさんはそんなに発酵も進んでおらず、さらにブシューのリスクを低減させるべく、袋に入れた状態に加え、缶自体も冷凍した状態で缶切りを差し込んだため、衆目の予想よりははるかに静かな開缶となりました。

ただ、凍っていても臭いは健在(らしい)。

缶が開いた
その瞬間からまもなく、臭いを感知した人たちから「臭い」の声が次々と。予想をまったく裏切らない、水洗化されていないお手洗いや、バキュームカーのような臭いは、ガッツリとしたもようです。

(当の自分はというと、屋外で花粉を吸い込んだためか、鼻がすっかりつまって、人よりも臭いのダメージがすくなかったみたい)

さて、場所を地元カフェに移して、試食会がスタート。

シュールさんはほぼ溶けて、おつゆの中には、つるんとした身のニシンが何匹が沈んでいます。日頃はあんまり生のニシンになじみがなく、どっちかっていうと、自分の中では生のハタハタをみているような外観のイメージです。

その身を取り出し、鋏でざくざくと適度な大きさに切り実食開始。

はさみでカットして
まずは、パン+玉葱で。いろんなサイトをみても、これらにジャガイモを加えた食べ方が一般的だとのこと。

無難な食べ方?
味は、塩からい。でも、まあ塩辛な味。食べられない味ではありません。最初は怖いので、何回か咀嚼して、そのままごっくん。そこで、口腔から鼻へと空気が抜けると、あの臭いがむわーんとしてきます。口一杯に広がるというより、粘膜沿いを這うように伝わって、そのままこびりつくかんじ。

でも、「こんな臭い」って覚悟していたので、個人的に耐えられないものではありません。開缶時の失敗(?)に懲りて、点鼻薬を使って、鼻の抜けをよくしてきたにもかかわらず、です。

そこで、次には1/8匹ほどの身をそのまま、口に放り込み、味をしっかり舌の上に残したあと、ウオッカ(この日はアブソルート)で洗うという、塩辛食べをしたところ、個人的にはこちらの方が好み。

試食のパーティーには10人強が参加し、うち、この味がオッケイだった人は3-4人ほど。その少数派の中、「これうまいっす」っていっていた男子も、やはり直喰いが好みっていってました。

飲み物はこのあと、自家製ペルツオフカのブラディメアリとかも試してみましたが、ウオッカストレートの方がいいかな。ただ、個人的には旨味のたっぷりとある(淡麗ではない)上等な吟醸酒と濃い味のチーズを合わせるのが大好きなので、シュールさんもいいお酒と一緒に楽しめれば、って未練も残りました。

そうして、せっかくの異文化体験を楽しんでいると、隣のお友達からショッキングな一言が。

「喋ると臭いよ!!!!」

そう、咀嚼したことで立ち上がり、さらに体温で温まったシュールさんの臭いが、息とともに強力に噴出するらしいのです。苦手系の人には、それは耐え難いらしく。

今後、シュールさん試食イベントをされる方は多いかと思いますが、いくら自分の口と身体に合ったとしても、その自分からは、非常にショッキングな臭気が噴出しているらしいので、ご注意してくださいね。