2014/01/20

最近の「専門料理」誌-最近読んだ料理本その2

料理本シリーズ、その2。

割とよく購入する料理雑誌に、料理界の岩波書店こと柴田書店から出ている「専門料理」誌があります。自分の料理は基本的に足し算(最低限の手間を積み上げていく)ではなく、引き算(玄人の仕事から素人のレベルでどれだけ手を抜いて大丈夫か考える)なので、プロ向けのこの雑誌はなにかと勉強になります。


その専門料理ですが、ここ1年ほど、少し毛色が変わってきた印象です(編集長氏が変わったから?)。特集が料理そのものでなく、料理人の考え方に焦点を絞ったようなものが目に付くようになってきました。2013年1月号の「料理界25人の言葉」に始まり、同年10月号は「料理書 人生を変える一冊」ときて、今年の1月号は『対談で探る 料理界 現在・過去・未来」。これまで単発の記事や連載ではあったかも知れませんが、これらは特集そのものが語り系のテキストで押しまくり、料理人の頭の中をのぞき込むような“非実用系”な内容です。非レシピ系でも、経営的な視点が強かった従来の店作り号とも違う印象です。

「25人の言葉」は購入を見送りましたが、残りの2冊は購入しました。

*ちなみに同誌のブログ「編集部だより」も、可成り濃厚なテキストがガッツリと、極めて楽しめます。

個人的には、この傾向は歓迎します。これらの特集が魅力的な理由は、対談号の上柿元勝×菊地美升対談の言を借りれば

「結局、料理って料理そのものだけでなく、誰が作っているかによって変わってくるものなんだと実感しますね」(菊地氏)

「料理には人間性が表れます。その人の考え方や哲学が料理の質を決めるんです」(上柿元氏)

ということでしょう(アンダーラインは筆者)。

自分の食に関する持論に「(適切な)知識や情報があると、よりおいしく食べられる」があります。今食べているものがどんなものか、どういう人がつくってくれたのか、などを知っていれば、一皿を前にしたときに、特に感覚を傾けるべき焦点を絞って味わうことができます。漫然と食べて「おいしい」と感じるよりは、より豊かな食卓になるはずです。

この知識というのは、食材や調理法はもちろん、作る人についても言えるでしょう。たとえば、料理店の常連になる場合には、味が合うことはもちろん、店内+常連客の雰囲気や、料理人/経営者の経歴や人柄というファクターもかなり大きいのではないと思います。そして、人のファクターを知ればこそ、食事としての愉しみ広がります。

レシピについても同じで、それを書いた料理人氏の気持ちやエネルギーの注ぎ方のポイントが分かると、より生き生きと伝わるものが出てきます。実際に調理するときにも、手を抜いていいところとだめなところを見極めるラインが、なんとなく見えてきます。

地方にいて、しかも素人で、という条件では、都市部の著名な料理人氏の店を訪ね、話をする機会を得ることなど非常に困難です。しかし、一連の「語り系」の特集に触れると、今まで読んできたレシピに、どことなく体温が立ち上ってくるような感覚がしてくるのは自分だけでしょうか?

とまれ、今後も(このペースだと半年に一回くらいずつ?)、この路線が継続することを非常に期待します。



======おまけ=====

余談で、個人的要望

これから、どんな特集を期待するかといえば、前エントリの池上先生本ではありませんが、まず古典+歴史シリーズでしょうか?エスコフィエ的なものよりもっと深く、歴史+文化を掘り下げてくれると、非常に興味深い。地方料理/テロワールにしても、気候や環境的な風土だけでなく、歴史的背景も肉付けされると、読み手/食べ手的には、食事をより深く楽しむための貴重な調味料になりそうです。

ただ、それが行きすぎて、かつてのプレジデント誌のような、偉人にまつわる人生訓シリーズにならないことも祈ります。大御所シェフが語る記事ではしばしば、「今の若い奴らは」的なお説教的フレイバーが効きすぎて、どうにもくどい記事がままありますので。

あ、あと音楽や絵画などを軸に、店での使い方+それにインスパイアされたルセット、パーティーの実例集、なんてのも楽しそう。よろしくお願いします。

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